二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 銀魂「市女笠篇」 立て直し ( No.5 )
日時: 2010/01/13 17:00
名前: コナ (ID: QDm7ZT.A)

八重を倒す為、刀を抜いた犯人は。
「あら万斉じゃない、この子殺していないわよね?」
あの人斬り河上万斉だった。
「何峰打ちでござるよ、無駄な殺しは控えとけと言われたでごさるからな」
「それもそうね…ところでアナタのような人が、わざわざ私に来たという事は何
か用でもあるの?」
澄みきったガラス玉のような瞳に戻ると、倒れたかつての戦友を悲しむ事なく淡
々と万斉に問う。

第四訓「人はカンペキではない」

「晋助から伝言を預かってきた」
「総督から?」
「『これだけ斬れば幕府の犬共を十分混乱させた筈だ、お前は次の襲撃に備えて
休め』との事でござる」
「一言一句伝えてくれてありがとう。
 しかし…隊士が私に殺されて混乱した真選組と幕府をさらに混乱させる作戦とは
総督もやるわねぇ」
まるで暖かな日だまりのような笑みをしとやかに浮かべる可乃。

青いたすきを巻いた、無地の蒲色の着物でもその笑みで美しく感じさせた。

「……そうでござるなお可乃殿」
二人は気づかない、ヘンテコが話を聞いて体を震わせてじっと様子を見ている事
に。
(た、大変やー早よぉ八重起こさんと)
ヘンテコは、地面と接吻をする八重の体を短い腕で、ゆさゆさと揺らす。
「万斉、この子…八重はどうする、連れていく?」
倒れる八重に近づいて、可乃は問う。
「拙者らの話は聞いてないから放置するでござるが…というか可乃殿、この
娘知り合いでごさったか」
「えぇ、私の右腕として戦っていた子よ」
可乃は、薙いで付着した血を払うと二本の刀を一本だけ鞘に納める。
「信じられないでござる、丸腰とはいえそれぐらいの強者なら先程の攻撃を躱せ
る筈…」
ごもっともだ。
「八重は言ったの『私は敵を斬る事をやめたい……敵を斬る度その人の悲鳴
が夢の中でこだまするから』って、だから八重はおちちゃったと思う」

可乃の表情は脆いガラスように切なく、月光を浴びているせいか悲しみを帯びていた。

「可乃殿……」
可乃の放つ切なさの波に、当てられた万斉はしんみりとしていた。
その瞬間。
「ひっ!!」
ヘンテコの目の前でざくっと地面を刺す刀の音が鳴り響いた。
「ねぇ、アンタどこまで聞いたの?」
柄を握ったままにっこりと妖艶な可乃の笑みを見たヘンテコは、さらに背筋を凍
らせた。
「あ…あ……」
「今までの話は、極秘な話も混じってるの否か応か答えないと……次殺すわよ」

可乃は刀を抜いてヘンテコを脅す。
もし、ドMの男性がヘンテコと同じ状況だったとしたら間違いなく喜ぶであろう

「ど、動物愛護協会にう…訴えてやる!!」
捨て台詞を吐くと普段使わない羽を広げて、空を飛ぶ。

「待て!! このキメラもどきが!!」
可乃は逃げようとするヘンテコを追い掛け殺そうとするが、万斉に肩を掴まられた。
「万斉! なんで止めるの!!」
「あまり騒ぎを起こすと…晋助の計画が水泡に帰するでこざるよ。
 それにあれが助けを呼ぶとしたら、八重殿を人質として利用できる…」
可乃の肩を離し、万斉は軽々と八重を持ち上げ肩に乗せる。
「……もし、幕府の犬が攻めてきたらアンタのせいだからね」
可乃は渋々万斉の意見を呑み、全ての刀を納刀し、先に歩み始めた。

「晋助…可乃殿は、少々女子にしては情が激しいでござるよ」
万斉は可乃の背を眺めながら、顔とやっていることのギャップの激しさにそう呟いた。