二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: フェアリーテイル 〜FAIRYTAIL〜 番外編更新 ( No.132 )
日時: 2010/11/20 22:09
名前: アビス (ID: U3CBWc3a)

番外編2〜別れの時〜




——————————12年後——————————

「・・・・・・」

カムイは一人、木の上で幹に身体を預けぽうっしていた。
するとそこに、一匹のイタチがやってきた。カムイはそれを見ると木から飛び降りる。

「チー。どうしたんだ?」

肩にチーを降ろさせ言うカムイ。チーが一頻り鳴くとカムイが頷いた。

「分かった。そんじゃあ行くか!」

暫く走ると小屋に辿り着く。その小屋の前にトルトニスが立っていた。
容姿は12年前からあまり変化なく、不思議の思ったカムイが尋ねても、
「乙女のヒ・ミ・ツ」など言って教えてくれなかった。

「きたわねカムイ。ご苦労様チーちゃん」

相変わらず優しい微笑みを浮かべるトルトニス。

「何の用だ?なんか大事な用って聞いたんだけど」

「ええ、今あなたに教えてる魔法の内、強い方あるじゃない?」

「ああ、それがどうしたんだ?」

「これからはそれを使うことを禁じます」

「はぁ〜〜〜!?どうしてだよ??」

「あら?そんな驚く事?」

カムイの表情にトルトニスは不思議そうに尋ねる。カムイはそりゃあそうだろ、と言いたげな顔で。

「使うなって・・・じゃあ何のために教えてくれたんだよ?」

「それはね・・・・」

「それは・・・?」

「実はね・・・・」

「実は・・・?」

「本当はね・・・・」

「何でそんな引きのばすんだよ!?」

じれったくなったカムイが叫ぶ。すると、トルトニスが不満気に頬を膨らます。

「本当はね・・・で本当に言おうと思ってたのに・・・」

「あ・・ああ・・・。悪い。・・で、何でだよ?」

カムイが機嫌を直す様に言う。するとトルトニスもけろっ、と表情が明るく戻った。

「この魔法は本当は太古の魔法・・・失われた魔法(ロストマジック)なの。
この魔法はあまりの威力で使う事が禁じられたものなの」

「な・・じゃあ何でそんな危険なもん、俺に教えたんだよ?」

「話は最後まで聞く!」

「・・・はい」

トルトニスの鋭い言葉に素直にうなずく。トルトニスはよろしい、と言うと続けた。

「この魔法は今でこそ失われた魔法とされてるけど、昔この魔法は
未曾有の災厄時に、神がこの世界を守ろうとして放つ神の雷とまで言われたのよ。
でも決して人間に対しては使われなかった魔法だったから、
『人間以外の脅威を目の前にしたときにそれを阻止するために生み出された魔法』と呼ばれてるのよ」

「・・・・終り?」

「ええ、終り」

トルトニスの言葉にカムイはため息を突きながら、もう一度質問した。

「・・・じゃあ何でそんな危険なもん、俺に教えたんだよ?」

「そんなの決まってるじゃない」

「・・・??」

トルトニスは真っ直ぐカムイを見た後、目を瞑り視線を落とした。

「あなたは私にとって一番大切な可愛い息子だもの。
いざって時、死んでほしくないから、強い魔法を覚えさせておきたいって思うのは当然じゃない?」

「・・・・・・」

「あらっ。照れちゃった?」

「〜〜〜〜〜〜」

図星で何も言い返せないカムイ。そんな様子を見てトルトニスは笑うと。

「ふふっ。けどやっぱり昔からの教えを無視してバンバン使うのも不味いでしょうから、
この魔法を使っていいのは『人間以外のもの』限定にしましょうか」

「人間以外のものねぇ〜〜。・・・もし俺が俺より強い奴に殺されそうになったら?」

「その時は運がなかったってことで・・・ご愁傷様」

「・・・・あんた、さっきと言ってる事矛盾してるぞ」

「それが私ですもの」

「自分で言ってりゃあ、世話ねーーな。ったく・・・」

「あっ、最後の教えにねカムイ」

「最後?」

カムイは不思議に思ったがトルトニスはその部分はそのまま無視して続けた。

「どんな事にも終りが必ずくるもの。どれだけ願っても、どれだけしがみ付こうとしても、
始まった事は終りに向かって行く。例えば、そう・・・。
私と貴方は出会い、そしていつかは離れる時が来る。これはあたりまえよね。

けど終わりを迎えれば、次にはすぐに新たな始まりが待っているの。
終わった事をいつまでも引きずってては、始まりはやってこない。

だから人には思い出がある。終わった事、その中での一番の記憶が思い出となって
心の中に残り続ける。そうすることで、終わりを終わりと割りきる事ができる」

「ト・・トルトニス?」

トルトニスが時々こんな風に変な事を言い出すのはカムイも知っている。
けど、今日のトルトニスは違っていた。まるで別れの言葉みたいな、そんな感じ。

「だからカムイ。あなたはたっくさんの思い出を作ってね。人として生きていく上で、
思い出が沢山ある人間ほど、幸せな人はいないから・・・ね?」

「あ・・ああ」

カムイが曖昧に頷くと、トルトニスは笑顔で頷いた。

「それじゃあ、食事にしましょうか。チーちゃんもお腹空いたでしょう?」

鳴くチーの頭を撫でるトルトニスを見てカムイは何故か不安な気持ちになった。
なんかこれが2人と1匹でとれる最後の晩餐のような気がしたからだ。

・・・・事実その翌日。朝起きたカムイは小屋にトルトニスがいない事に気が付き、
そしてそれから何日経っても、トルトニスが帰って来る事はなかった。

テーブルの上には置き手紙があり、それにはこう書いてあった。

『親愛なる私の可愛い息子へ
私の言った事は決して忘れないように。それとチーちゃんのお世話、ちゃんとするように。

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