二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: フェアリーテイル 〜FAIRYTAIL〜  46話更新 ( No.169 )
日時: 2011/02/06 13:09
名前: アビス (ID: U3CBWc3a)

47話〜幸せの味を噛み締めて〜




「ここだよ」

レナに導かれ、中央公園に来たカムイ。中央公園と呼ばれる部分は真ん中に噴水があり、
空に吹きかけている。レナが空に指差した。カムイは空を見上げると息をのむ。

「・・・・・・」

空に輝く無数の星々。それが空に舞う水飛沫で輝きを増し、
水飛沫も星の輝きを受けて光っている。

「綺麗でしょ?空に上がる水しぶきと星の輝きが混ざって」

「確かにな。こんな綺麗な光景はそうは見れないな」

「これ、教えてくれたのはお父さんなの。昔はよくお父さんと一緒に来て、時を忘れて眺めてた。
それで必ずお母さんが私たちを迎えに来るんだけど、最後はお母さんも混ざって空を見上げてた」

レナは過去を思い出すように目を閉じ、胸を当て言った。
カムイはそれに、そうか、と余計な事は言わず、その気持ちを素直に受け止めた。

「二人とも、お前がギルドで働いてる事心配してるんじゃないのか?」

「ううん。カムイがいるから心配する必要ないってさ」

「・・・そう言われると、嬉しいけどプレッシャーだな」

カムイがそう言って微笑すると、レナは嬉しそうにはにかんだ。

「ところで、カムイ。どうしたの?急に私ん家来たり、思い出の場所に連れてけって言ったり」

「ああ・・・・それは・・・・」

カムイが歯切れが悪くなったことにレナは首を傾げた。

「どうしたの?」

「いや・・・・。これならもう渡す意味ねぇな」

「渡す?・・・何を?」

「あ・・・・いや・・・・」

今のは失言だった、と内心で後悔する。だが、ここまできて誤魔化すのも、後味が悪くなるので
カムイはポケットからある物を取りだした。

「それは?」

「輸送用魔水晶」

カムイはそれから一つの箱を取り出して、レナに差し出した。レナはよく分からな気な表情を
浮かべながらも、その箱を両手で受け取った。

「これは?」

「アップルパイ」

「え?」

レナは目を丸くしてカムイを見た。
カムイは出来るだけ素っ気無く答えたが、内心はどよめきまくっていた。

「どうして?」

「どうしてじゃねぇよ。・・・・まぁ、一言で言うならいろんな思い違いから生まれた物だな」

レナはカムイの妙な言い回しに首を傾げながらも、箱を開けた。
中に入っていたのは一つのアップルパイ。お世辞にも綺麗に出来ているとは言えない出来栄え。

「・・・もしかして、カムイが作ったの?」

「・・・・ああ。お前にやるために態々キッチンに立って四苦八苦しながら作ったんだ。
・・・正直、味には絶大に自信がない。見た目からも何となく想像つくだろう?
それをどうするかはお前が決めろよ」

「・・・・じゃあ、今食べてもいい?」

レナにそう言われ、正直嫌だったが、カムイは諦めて頷いた。
レナはアップルパイを手に取るとそれを口の中に入れた。

「不味かったら、その箱に戻してもいいぞ」

カムイはそう言ったが、レナは口をモグモグさせている。それにあまり表情が見られなく、
カムイにはレナは思っているのかわからない。
レナはと言うと、食べての最初の感想はなんて言うか悩んでいた。食べての感想は沢山あった。

温かくもなくて、冷たくもなくて微妙。焦げてる部分が多くて苦い。林檎のを煮詰めすぎていて、食感がない。
その他にも幾つかの感想が浮かんできたが、どれも不評のものばっか。
だからレナは素直に、心の奥底から湧き出た言葉を言うことにした。

「とっても幸せな味がする」

「・・・・・」

予想外の言葉に固まるカムイ。レナはそれをお構いなしに残っていたアップルパイを本当に幸せそうに召しあがった。

「ふ〜〜。御馳走様」

食べ終わったレナは手を合わしてそう言った。

「・・・・上手かったのか?」

まだ呆気に取られているカムイはレナにそう言った。と、レナは薄く笑うとこう言った。

「食べて美味しいって思うのと、食べて幸せって感じるのは違うの」

「そんなもんか?」

「そんなものなの」

レナはそう言うと、近くのベンチに腰を下ろし空を見上げた。

「・・・・ここの噴水ね。近々取り壊されることになってるの」

「そうなのか!?なんでだ?」

カムイが尋ねるとレナを首を横に振った。

「何か色々と事情があるみたいだけど、私には分かんない。けど、もう決定みたいなの」

「そうなのか。残念だな」

「うん。明日にはギルドに戻ろうと思ってるから、これが多分最後になると思う。・・・でも」

レナはそこで言葉を切るとカムイの方を向いた。

「最後にこの景色をカムイと見れて良かった!」

「・・・ああ!俺もこんな景色を見られて良かったって思ってる」

カムイはそう言うとレナの頭に手を置いた。

「サンキューな。何時か俺も、これに負けない場所をお前に見せてやるよ」

「うん!約束だよ?」

レナは頭で滑るカムイの手にこそばゆそうに笑いながらそう言った。カムイもそれに笑いながら頷いた。