二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: フェアリーテイル 〜FAIRYTAIL〜 51話更新 ( No.187 )
- 日時: 2011/04/07 23:08
- 名前: アビス (ID: dFf7cdwn)
52話〜虚無の影〜
カムイは貫かれたショックと痛みから気が遠くなっていく。
だがチーに叩き起こされ、なんとか意識をはっきりと戻す。
「・・・・・うう!!」
カムイはチーを武具化させ、身体に刺さっている岩の槍を砕く。
—ビチャッ!!ビチャチャ!!!—
大量の血がカムイからなだれ落ち、小さな池溜りを作る。
また意識を失いそうになるが、目の前の起こっている状況に必死に頭を使う。
—ッズゥッズゥズズズ!!!—
「叫び・・・・いや、悲鳴か?」
辺りに響く謎の音。そして大気の震え。空間が泣いているのだ。
その原因のおそらくと思える人物をカムイは眺める。
「ああ・・・・・あああああああ!!!」
「レナ」
膝を着き、頭を抱え泣き崩れているレナ。カムイは重い足を動かしレナに近づこうとする。
だがまた槍がカムイを襲う。今度は岩じゃない。空間から影のような物体が出ているのだ。
「っつ!!これじゃあ近づけねえ。・・・・・・!!不味いぞこれ・・・・・」
カムイがそう言って周りを見渡す。見るとレナを中心に空間がまるで崩れているようになっている。
崩れた空間は虚無。どうみても人が生ける領域じゃない。それが少しずつだが、拡大しているのだ。
まるで空間が虫喰ってしまったかのようだ。
今はまだ術式の結界で外には出るのを防いでいるが、この空間が結界を飲み込めば大変な事態になるのは明らか。
「レナ!!」
カムイはレナに呼びかけ正気に戻そうとする。だが
—ボタボタッ!!—
怪我の痛みと出血が声量を奪う。それでもカムイは歯を食いしばり叫んだ。
「しっかりしろ!!!」
「私は・・・・私は!!!違う・・・そんなつもりじゃ・・・・!!!!」
「・・・・・まさかじっちゃんの言ってたことって・・・・」
カムイはこの状況で前にマスターから言われた事を思い出した。
『レナちゃんの魔法じゃが、しっかりと育ててやれよ』
『・・・いずれわかるじゃろう。とにかくちゃんとレナちゃんをちゃんと見てやれよ。
それができるのはカムイ。お前さんだけじゃからな』
「・・・・・レナ!!!!」
マスターの言葉を改めて噛み締めたカムイはトルトニスを発動し、レナへと突っ込んだ。
レナの魔法はカムイを敵とみなしたのか、幾多の影の槍がカムイに襲いかかる。
「放雷(ボルタ)!」
カムイは体の前で両手首を合わせ手を開き、そこから雷のレーザーを放つ。
虎降雷と似ているが、威力はその比ではない。
だが影はそれに対し、お互いが絡まり合い一つの球体のようになると、そのレーザーを受け止めた。
そしてそのままレーザーを喰いつくしてしまった。
「・・・あの影自身が意識を持ってるみてぇだな。『レナに近寄る全てのものを喰らう』。
それがあの影の存在か。空間だろうがなんだろうが、レナの傍に存在するものはお構いなしか。
・・・・・似合わねぇな、レナ。お前にそんな力は似合ねぇ」
カムイは口ではそう言うが、全てを否定しているわけではなかった。
人間誰しも絶望をすれば、何か理不尽なことがあれば、少なからず恨みを持つ。
何も恨まない人間なんていない。それはただ己の気持ちに気付いていないだけ。
恨みは積もればそれに対する拒絶へと変わり、それもいき過ぎれば虚無へと変わる。
その思いが今レナにあり、そしてそれが魔法によって今、現実へと出てきてしまっている。
「・・・・・心が崩れそうな時、助けられてこそ仲間ってもんだな」
カムイは薄く笑みを浮かべながら言うと、全身から大量に電気を走らせながら
もう一度レナに向かった。影がカムイに伸びるが、カムイはそれを全て薙ぎ払い、レナの後ろに回る。
カムイがレナに手を伸ばすと、レナの背中からカムイから近づけさせまいと
大量の影がカムイを覆い尽くす。
「く・・・・うおおおおおおお!!!」
右手に全ての魔力を注ぎ込み、自分の手の皮膚がめくれるほどの電気が集まっていく。
「てめぇらがいると、レナに笑顔は戻らねぇ!!!引っ込んでろ!!!!!
全てを灰塵と帰す雷神の怒涛・・・・・雷の核(インデグ・ノヴァ)!!!」
—ピシャーン!!ズドドドーーン!!!ゴロゴロ!!!—
手に溜めた魔力が球体に変わり、そこから無数の雷が放出される。
それにより影も空間の虚無も破壊され、術式の結界も粉々になった。
「はぁ・・・はぁ・・・・。少し、レナに当たっちまったな」
丸焦げになってしまった右手を押せえながらカムイが言った。
レナは気を失っているが、命には別状はないようだった。
「・・・・よいしょっ!」
カムイは動かない右手を庇いながらレナを背中に背負う。
「取りあえず、レナをギルド連れてくか」
「・・・・・・い」
「??」
レナに名前を呼ばれたような気がして振り向くが、レナは眠ったままだった。
前を向き歩き出そうとした時、また聞こえた。
「ごめんね、カムイ」
「・・・・・」
「ごめんね」
レナは今も眠ったままだ。これは寝言。別に相手にする必要はないのだが、カムイは静かに言った。
「こっちのセリフだ」
——————————ギルド——————————
「つー訳で、今から第二回B・O・FT開始だーーー!!」
「やめーい!!」
ナツの哀れも無い提案にマスターが止める。近くではルーシィやレビィが呆ける。
ルーシィやレビィはエバーグリーンによって石にされていたのだが、
石にされていたエルザがちょっとしたことがきっかけで復活し、
エバーグリーンを倒したことで石化されていた女性たちが戻ったのだ。
人質も解放され、ラクサスのゲームに付き合うことも無くなったが、
ナツはラクサスが持ちだしたゲームを、ただのフェアリーテイルNO1を決めるものだと
疑わず、第二回戦を始めようとしていたのだ。
「だって俺たち何もしてねーじゃん!!ホラ!!バトルしよーぜ!!!」
「どうしてもってんなら相手にならなくもないよ」
「カナ。乗らないの」
「何だ。皆元に戻ったんだな」
と、そこでカムイが戻ってきた。
「ああ。カムイ・・・・・」
そう言って振り返ったミラが、そこで口に手を当てて目を大きく開けた。
「ちょ・・・どうしたの!?」
カムイの怪我の状態にミラが慌てて駆け寄る。その場にいたメンバーも固まる。
それにカムイが無理に笑いを浮かべる。
「俺はいいから。レナを頼む」
「そ・・それ以上動かないで!!今治療するね!!!」
ミラはそう言うと急いで医務室へと向かった。すると
—ビビ!!ビーーーー!!ビーービーーー!!!—
ギルド中に情報ボードが出てきて、そこにドクロに雷のマークが付いたものだ。
『聞こえるかジジィ。そしてギルドの奴等よ』
「ラクサス」
そのボードから聞こえたのはラクサスだった。
『ルールが一つ消えちまったからな・・・・。今から新しいルールを追加する。
・・・・・B・O・FTの続行するために、俺は『神鳴殿』を起動させた』