二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: フェアリーテイル 〜FAIRYTAIL〜  オリキャラ募集中 ( No.215 )
日時: 2011/10/04 22:29
名前: アビス (ID: dFf7cdwn)

57話〜スザクラの過去〜




斬撃が激しく舞う中、スザクラは口を開き語り始めた。

「お前ももう気付いているだろう。俺自身の魔力は弱く、小さい。
人は力が全てじゃないとよく言うが、結局力が無ければ居場所さえ無くなるんだ」

——————————5年前——————————

「止めろ?・・・・・どういうことですか!?マスター!!」

スザクラは自分を捨てると言うマスターに声を上げた。
それにマスターは分からないのか?と言いたげな表情で言った。

「お前・・・・このギルドで満足に成し遂げられた仕事は幾つだ?
どれもガキでも出来るような仕事で精一杯。少し上になれば、必ず失敗。
お前みたいな出来そこない、居ても邪魔以外何物でもないんだよ」

「けど俺は・・・・・!!」

スザクラは分かっていた。自分がどれだけ落ちぶれた存在なのかってことぐらい。
自分がどれほどこのギルドに迷惑をかけてきたってことぐらい。
だがそれでもスザクラはギルドを離れたくなかった。離れるわけにはいかなかった。
その理由は・・・・・・。

「先代のマスターがまだ赤子だったお前をわざわざ拾って育ててやったみてぇだが、
その恩返しがこれじゃあな〜〜〜」

「・・・・・・」

スザクラは放っておけば死んでいたであろう赤子だった自分を、拾ってくれたこのギルドの
先代マスターに感謝をしていて、このギルドも家族のように思っていた。

「マスターが面倒見てたってことで今まで黙ってたが、この際だ。はっきり言ってやる。
このギルドにお前の居るべき場所はねぇ」

「・・・・・!!」

「とっとと出て行くんだな。そんで精々自分が魔導士だってことは隠して過ごすんだな。
そのほうが賢明だぜ?」

蹴り出させるようにしてギルドを追い出されたスザクラ。
スザクラはこのギルドを諦め、これからどうして生きていこうか。それを考えながら
歩いていると、目の前ににやにやしたチンピラたちが現れた。
彼らはスザクラ逃げられないように取り囲む。

「よう、ちっと面貸せよ。『魔導士』・・・・さん」

————————————————————

「ぐはっ!!」

スザクラが塵溜めの中にふっと飛ばされる。

「あひゃひゃひゃひゃひゃ!!どうしたよ魔導士さんよ〜〜〜!!
自慢の魔法で俺らみたいなチンピラぶっ飛ばして下さいよ!!!」

相手は魔法を持たないチンピラ十人。いくら相手が多勢でも
普通の魔導士なら魔法を放てば一瞬で片がつくような連中だ。
だが、スザクラは手も足も出ないような状況だった。

「くそっ!!」

スザクラは手を前に出し、相手の体に磁力を与える。
ここはゴミ捨て場。金属なんかも沢山落ちている。普通ならそれらの金属が
反応して相手の体に襲いかかるはずだが、それらはカタカタ揺れるだけで浮きもしない。
それを見てチンピラたちが更に大きな口を開けて笑った。

「あははははっはっ!!ほんと、こんな魔導士見たことねぇよ。
まぁ、そのおかげで俺らは最高のうさ晴らしが出来るわけだが・・・・・な!!」

チンピラに頭を掴まれ、腹蹴りを喰らう。鳩尾に入り吐きそうになるのを必死にこらえる。

「普段何かと偉ぶってる魔導士を、例え歴代最高の弱さの奴でも
こうやってぶっとばせられるんだからな」

「・・・・・・く!!」

自分を捨てたギルドを憎く思っていない。自分の弱さを憎く思ったことも無い。
ギルドが自分を捨てた理由も納得するし、自分の弱さを理解して生きてきた。
だが、それでもスザクラは涙が溢れ出た。何が悔しくて泣いているのかも分からない。
本当に悔しくて泣いているのかも分からなかった。

「ぎゃはははは!!!おい、こいつ泣いてんぜ!?」

「そりゃあそうだろうよ!こんな惨めな思いして泣かない奴なんて・・・・・お?」

—スタスタスタ—

この異常な空間の中、一人だけ何事も無いかのように進む人物が一人。
その人物は這い蹲っているスザクラの横を抜け、そして目の前に立つ男の前で止まった。

「・・・・・邪魔だよ」

「なんだてめぇ?てめぇの方こそ・・・・・・!!」

—バキッ!ゴッ!ガツッ!ガッ!ゴツッ!ズシャーーン!!—

その人物は素手でチンピラを蹴散らし、最後に強烈な雷撃を発生させ
そこにいたチンピラ全員が塵溜めの方に吹き飛ばされた。
そしてその人物は何事も無かったかのように進んみ、塵溜めの前に座り込んで何かを拾った。

「ったく!面倒患わせやがって。ベトベトだぜ」

そに人物が拾ったのは猫だった。口には魔導式音楽プレイヤーを銜えている。
どうやらこの猫に盗られて追いかけて来たらしい。
その人物は音楽プレイヤーをポッケにしまうと、振り返りその場を後にしようとした。

「ま・・・待ってくれ!!」

と、スザクラは思わずその人物を呼びとめてしまった。何か言いたいことがあるわけでもないのに。
その人物が振り返る。年はまだ自分とほぼ同じ、二十歳にもなっていない男性だった。
そしてスザクラはこの人物に見覚えがあった。今勢力を伸ばしつつあるギルド・フェアリーテイル。
そのマスター・マカロフの息子・・・・・ラクサス。
ラクサスはスザクラをちらっと見た後、また前をと向いた。そして

「んな、きたねー格好で俺に話しかけてくんじゃねーよ」

そう言われ、スザクラは自分の格好を見た。確かに汚い。
それらを最小限振り落とした後、スザクラはもう一度ラクサスの方を見た。
言葉が出ずに黙っていると、逆にラクサスが口を開いた。

「あんな愚図どもに舐められててめぇ、何とも思ってねぇのか?」

「なに?」

「こんなチンピラの愚図に舐められて腹立たねぇのかってきてんだよ!
いいか?この世界は力が全てだ。無い者は有る者に服従する他ねぇ。
てめぇは魔法使えんだろ?本来は力を持つ側だろうが。どうしてあんな腐れ野郎にやられてんだ?」

「・・・・・俺には魔法の才が・・・・・」

その言葉にラクサスは興味が失せたような顔をした。

「はっ!自分から諦めてんじゃ世話ねぇな。自分の力を信じてねぇようじゃ、一生負け組だな」

「自分の力を・・・・・信じる?」

スザクラは自分の耳を疑った。なぜなら今まで自分は一度たりとも自分の力を信じたことが無かったのだ。
自分の力は信じられないもの。そういうものだと思い込んでいた。

「お前は、自分の力を信じているのか?」

「さあな。ただ、そういう馬鹿程、面倒なことはねぇな」

「??」

「てめぇももっと自分を見つめてみろ。そうすりゃ、見えてくんじゃねぇか?
まぁ、俺にはどうでもいい話だがな。じゃあな」

「・・・・・」

そう言ったラクサスの後ろ姿をスザクラを眺めていた。この男の力に惚れてしまったのだ。
ただ単純に腕っ節がという話だけではない。それだけではない、何かがこの男にはあると
スザクラは確信していた。