二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: フェアリーテイル 〜FAIRYTAIL〜 71話更新 ( No.257 )
- 日時: 2013/02/26 21:18
- 名前: アビス (ID: dFf7cdwn)
72話〜生きる意味〜
ゼイルは腕を前へと突き出すと、溜めた黒炎全てを放出させた。
レナも掛け声とともにクロの力が解放され、玉の一つ一つから無数の針が木の枝のように
不規則に分かれていき、ゼイルへと押し寄せた。
黒炎がクロが焼き払い、クロが黒炎を侵蝕する。そんな二つの激突。
「うおおおおおおお!!」
「はあああああああ!!」
互いに押し引きを繰り返す。その余波で周りの木々が次々と吹き飛んでいく。
「あああああああああああ!!!」
「なに!?」
だが、その均衡も崩れつつあった。クロの侵蝕が少しずつ進み出したのだ。
「このぉ・・・・負けられるか!!」
ゼイルは更に黒炎に魔力を注ぎ込み、火力を上げる。
・・・・・・だが
—ズアァアアアアァァアァアア!!!—
「!!!」
—ズシャッ!—
クロが黒炎をかきわけ、ゼイルの身体に幾本もの針が突き刺さる。
終わった、ゼイルは心の中でそう感じたが、自分の身体に起きている異変に
直ぐにそうじゃないと感じた。
「こいつは・・・・・」
身体に刺さる針の色を見て、ゼイルは目を丸くした。
針はゼイルの手前数センチのところでシロへと変わりへていたのだ。
「あなたを殺す気はないっていったでしょ」
「・・・・けっ!とことんあめぇ野郎だな。
・・・・・くそ・・てめぇみてぇな奴に俺が負けるなんてな」
「私だけの力じゃ、あなたには勝てなかったよ。
仲間がいたから、命を懸けても守りたいっていう仲間がいたから、私はあなたに勝つ事が出来た」
歯を喰いしばるゼイルにレナは少し穏やかな表情でそう言った。
それを見たゼイルは少し無気味な笑みを浮かべてこういった。
「俺だってそうさ」
「え?」
ゼイルの予想外な言葉に言葉を詰まらせるレナ。それを見て、ゼイルは更に笑みを浮かべた。
「俺だけの力じゃ、ここまで強くはなれなかった。
同士がいたから、例え何万人を殺そうが救いたいっていう同士がいたから、俺はここまで強くなれた」
「・・・・・もしかしてそれが、オラシオンセイスに従っている理由?」
「口に気ぃつけろって言っただろ。だが・・・・・いいぜ、教えてやるよ」
ゼイルはそこで一つ、区切りをつけると話しだした。
「炎祈師の一族はもう俺の他には誰もいねぇ、さっきそう言ったよな。
今から400年前、一族は一度ゼレフの手によって壊滅的な被害を受けた。
だが生き残った僅かな者たちの手で現代まで炎祈師は
その血筋を繋げてきたが10年前、悲劇を繰り返された。
ゼレフ書の悪魔によってな」
「!!」
ゼレフと言う名を聞いて身体を震わすレナ。それにゼレフ書の悪魔というのも
カムイやグレイから聞いた事があったからだ。
「てめぇも聞いたことあんだろ。ゼレフが作りだした生きた魔法。
奴の名はガーゴイル。そいつによって一族は完全に滅んだ。
当時7歳の俺は瀕死の重傷を負いながらも奇跡的に生き延びた」
「・・・・・・・・」
レナは黙ることしかできなかった。自分が同じ歳の時は両親ともに幸せに暮らしていた。
けどもしそれが一瞬にして壊れたらどうなっていただろう?
大切な人も、友達も家族も全て死に、残った自分は何を思うだろう。
とてもじゃないが考えられないし、考えたくも無いことだ。そんなことを彼は体験している。
「その時点で俺は決めた。一族を滅ぼしたゼレフ書の悪魔を含むゼレフに関連するものを全てこの手で壊し、
ゼレフ自身もこの俺の手で必ずぶち殺し、もう一度一族を復興させるってな」
彼みたいに復讐だとか一族の復興とか考えられただろうか。おそらく無理だ。
「俺が闇ギルドで活動してるのは蛇の道は蛇と思ったからだ。
そして俺とブレインの野郎が手を組んでるのは、今回の作戦の戦力として奴は俺の力を欲し、
俺は奴の魔法でゼレフに関する情報を手に入れさせる為のもんだ。
・・・・・・どうだ、これがてめぇの知りたがってた事だ」
「・・・・・悲しいね。そんな生き方してて楽しいの?」
レナはようやく絞り出せた言葉がそれだった。しかし、ゼイルはそれを鼻で笑った。
「っけ!いかにも幸せな暮らししかしてこなかった餓鬼が言いそうな台詞だな。
そんな台詞は三流ドラマの名台詞にも上がってこねぇぞ」
「・・・・・見るんだ。三流ドラマ」
「るっせぇ!俺の勝手だろ!!はぁ・・・・・・・・・殺せ」
「え?」
ゼイルのため息の後についた言葉にレナは言葉がつまった。
それまで諦めの表情を見せていたゼイルだが少し苛立ちの表情を浮かべた。
「聞こえてんだろ。殺せって言ってんだよ。てめぇみてぇな甘ちゃんに
負けるようじゃあこの先どれだけ強くなろうが、ゼレフはおろかあの悪魔たちにも勝てねぇ
俺が生きる意味はもうねぇんだよ」
再び諦めの表情に戻るゼイル。戸惑いの表情を隠せないレナ
「何で私が・・・・・」
「てめぇが俺の魔力全部奪ったせいでろくに動けねぇんだよ。それに俺の生きる意味も奪ったんだ。適任だろ」
「そんな!諦めないでもっと強くなるとか!他にも生き甲斐を見つけるとかして・・・・・!!」
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇよ!!とっとと殺せって・・・・・!!」
——バシッ!!
「ッ!」
「え?」
鳴り響くビンタ音。その場にいる二人ともが驚いた。なんせゼイルの頬を叩いたのは
「・・・・・ペレ?」
ゼイルの技、ペレで現れた髪の長い人影だったからだ。
良く見ると女性のような顔立ちをしているのが分かる。
「なんだこいつは?」
(気付いてなかった・・・・・??)
ゼイルの不思議そうな顔を見てレナも不思議に思った。技の発動で姿を表したこの人影。
ゼイル本人が知らないのは可笑しいと思ったからだ。
女性はゼイルに何か訴えるような表情を浮かべ、そして次にレナの方に向きを変え
僅かに微笑むと姿を消した。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
二人とも今起きた事に唖然になっていると
—ピカッ!ゴオオオオオオオオオオ!!!—
「もう!?次から次からなに!?」
突然眩い光が天空へと伸びていく。
「ありゃ・・・・ニルヴァーナだな」
「え!・・・・あれが!?」
レナは再びその光を見る。立ち上る黒い光に黒い邪気のようなもんが吸い込まれている。
「・・・・・急げよ」
「え?」
「何やってんだ。てめぇの仕事はブレインたちがやることだろう」
「でも・・・・・・」
本当は今すぐにでも駆け出したいが、このままゼイルを放っておいたら
魔力を回復させて死なれてしまうかもしれない。
レナはそう感じ躊躇していた。そんなレナの考えを見抜いたゼイルは諦めたような表情を浮かべてこう言った。
「安心しろ。もう死ぬ気も失せた。支配してた炎に叩かれて死んだんじゃ、
俺の唯一の誇り、炎祈師の名が腐っちまう」
それを聞いたレナは安堵の笑みを浮かべて走り出した。
だが、途中で足を止めるとゼイルの方へと顔を向けた。
「あなた・・・・・フェアリーテイルに来る気はない?」
それを聞いてゼイルは一瞬驚きの顔をしたが、その後僅かに笑みを浮かべて言った。
「・・・・てめぇら如きで本当にオラシオンセイスを撃退出来たら考えてやるよ」
それを聞いてまた笑みを浮かべると走り出した。今度は躊躇いもせず、光の元へ真っすぐと。