二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ■━…紫弓 【銀魂】 ( No.166 )
日時: 2010/05/01 19:09
名前: 帽子屋 ◆8ylehYWRbg (ID: vtamjoJM)
参照:            ──「ずっと好きだよ」『でっていう』

■━……参六


「おや、どこのチビかと思えば稜弥じゃないかィ? 何をビクついているんだね」

『ビクついてなんかないわ!! …いや、ビクついてるか……。
 つかチビじゃねェし!! 似蔵こそそこで何してんだよ』

稜弥が恐る恐る船の前に帰ってくると、岡田似蔵が外に立っていた。
船に入るのが怖かった稜弥がビクビクしながら船の入り口付近をうろついているのをうっかり見られてしまったのである。

「くく…、中で奇妙な藍色の髪をした女が有城と暴れていてねェ。
 まぁ決着はついた様だが…見てるとウズウズしちまうんで、外に出てきた訳さ」

似蔵は「お鼻スッキリ」をワンプッシュし、そう淡々と話した。
稜弥はその話を聞いた直後、脳裏にふと銀時が浮かんだ。

( 今のお前があそこに居んならよ。俺も安心だわ )
( 俺の嫁宜しくね稜弥チャン )

俺が負わせた傷で先生と戦ったってんなら、勝敗は目に見えてる…
ヤベェぞ、俺宜しくされたのに、あの女がもっと大きな怪我したら———

稜弥は居てもたってもいられず、その場から駆け出し、船内へ飛び込んでいった。

似蔵は、また妖しげな笑みを零し、呟いた。

「また誰かに何か言われたんだろうねェ。
 いろんな事に流されるのが、お前の悪い癖だよ、稜弥」


━━━━


「…驚いた、傷薬が空になってしまった」

そうぽつんと薬品棚の前で呟いたのは有城だった。
空っぽになった傷薬のビンを恨めしげに見て、トンと机の上に置いた。

「一日にどれぐらい治療をしたのか…、! 何という事だスペアも無い」

奥へ奥へと手で棚を漁ったが、傷薬のスペアが出てこなかったらしく、ずーんと肩を落とす姿はレアだった。

すると。
かちゃん、きぃ、と戸を開ける音がした。
有城は戸の方に目をやる。

そこには、煙管を吹かした高杉の姿があった。

「よォ。傷薬を切らすたァ船医にあるまじき失態だなァ六助」

「…失態という程の問題でもありません故。また何かお有りですか」

またお前かと言わんばかりの怪訝顔を浮かべ、有城はふうとため息をついた。
高杉は何も言わず、ただ静かに泉菟が寝ているベッドに近づいた。

スヤスヤと先程の乱闘が無かったように穏やかに眠る泉菟。
その泉菟の頬を、高杉は冷たい指で頬を触った。

泉菟を見つめる貴方の瞳には、何か悲しい物が映っていたと思うのは、俺の思い過ごしなのだろうか。

有城はそんな事を思いながら、空になったビンをゴミ箱に投げ込んだ。


「嗚呼、そういえば。貴方に頼まれた事、ちゃんとやっておきましたよ。
     こういう事はこれからは俺に頼むのはよしてもらいたい物ですが」
と、思い出した様に言う有城は、徐(おもむろ)に白衣から丸まった書類の束を取り出す。

その書類達の表紙には、「秘」と大きく書かれていた。

高杉はそれを貰うと、手で簡単にパララと捲りあげる。

暫くその書類を凝視すると、クククと妖しい笑みを零し始めた。

「しっかりと調べてくれてんじゃねェか。どこから仕入れんだこんな情報はよ」
「貴方が調べろと言ったから調べたまでです。調べたら出てくるモノなんですよ。ただ…こんな事何に役立つかが俺には甚だ検討がつきませんが」

呆れた顔した有城はニヤニヤとしている高杉に若干引いた。

高杉は書類を懐にしまうと、寝ている泉菟を担ぎ上げ始める。
それを見た有城は驚き、
「…何をやっているのですか、まだ目も覚めていないというのに」
と、静かに高杉に言う。

高杉は、少しの間 間を置いてから

「…コイツとは話があんだよ。目が覚めてからじゃ遅ェ」

と有城に静かに言った。

何も言えなくなってしまった有城は、出て行く高杉をただ、見送るだけしかできなかった。


■━━……