二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ■━…紫弓 【銀魂】 ( No.194 )
日時: 2010/10/17 22:02
名前: 帽子屋 ◆8ylehYWRbg (ID: MDpJUEHb)
参照:                あいらぶゆー!       


■━……参九



『アァァァァァァ有城せんせェェェェェ!!!』

ズザァァァ!! と医務室にスライディングしてきた稜弥を見て、荒れ果てた部屋を掃除していた有城は怪訝そうな顔をする。

「……ほんっと、状況が読めない上に馬鹿とは救いようがありませんね」

有城は散らばったガラス破片を箒で掃いた。

『あ、あの藍色の髪の女は!?』

ハァハァと胸を上下させ、稜弥は落ち着かない様子で有城に聞いた。
キョロキョロと室内を見回してみても、無惨に割れたドアや薬品のビンの破片、グシャグシャになったシーツのベッドが目に付くだけ。
泉菟の姿は見えなかった。

「高杉様が連れて行きました。俺はあの女が暴れた片付けを任されたわけです。本当に人使いの荒い……」

塵取りに集めたガラスやゴミをザーッとゴミ袋に流し込んでいく有城。
それを聞いて、マジかよ……と項垂れた稜弥。

『あ、兄貴が持っていったんだな!? じゃ、兄貴の部屋にいるってことだ!! せんせ、俺ちょっと行ってく』

「まあまあ待ってください」

気付いた稜弥が部屋から飛び出そうとしたその時であった。
妙に落ち着き払った有城が、稜弥を呼び止めた。

「今行ったところに何もなりはしませんよ。行ったところで貴方が得することは何もありません」

ぱんぱんと手を払う有城。
稜弥はぐるりと向き直って、

『俺が行かなきゃ、アイツが危険にさらされるかもしれないんだって!! 俺のダチ公と約束したんだよ!!』

と、大きく叫んだ。
しかし有城は、

「それがどうしたと?」

態度を変えなかった。

「あの方の命令は絶対です。それは貴方もお分かりでしょう? 貴方が今しようとしている行為は、あの方の命令に逆らうことになるという事を気づいて下さい」

『だけどッ!!』

言う事を聞かない稜弥に、有城はチッと舌打ちをした。
そして、どこからか出した1本のメスを、俊敏な動きで発射された。

そのメスは勢い良く稜弥の頬に掠る。
壁にメスが刺さった時には、稜弥の頬から紅い血が垂れた。

「言っても分からないくらい、お前の知能は落ちたのか?」

今までとは違う口調の有城に、稜弥はビクついた。

「……もういい、もう面倒くさい。好きにしろ。俺はお前が高杉様に何言われても絶対お前を庇わないからな」

さっと髪をかきあげて、有城はため息をついた。

『……有城、先生?』

稜弥は良く分からないという感じで有城の名前を呼んだ。

「メスで切ったのはお前にケジメをつけさせるつもりだったんだが、お前には効いてないらしいしな。ほら、さっさと行かないか。掃除ができないだろう」

メスで切った頬の痛みが、急に有城の優しさに思えてきて、少しだけ嬉しくなった。
こんな風に言っているけど、先生は俺の事、考えて言ってくれてるんだな。と、改めて実感した稜弥であった。

『あ、ありがとう有城先生!! ほんと、ホント感謝するから!!』

稜弥はそう言うと、ピューッと部屋から走り去っていってしまった。



「……つくづく甘いな、俺も」


有城はそう稜弥が行った後に呟くと、煙草に火をつけ、煙を肺に送った。


■━……