二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 紫弓 【銀魂】 ( No.28 )
日時: 2010/01/15 19:28
名前: 帽子屋 ◆8ylehYWRbg (ID: vtamjoJM)
参照:         ——『殺さないで、って素直に言ったらどうだよ』

■━━…弐参


兄貴と顔を合わせたくなかった。
自分勝手なのは分かってるけど、どうもイライラが納まらない。

何でだろ、強い奴が久しぶりに来て俺嬉しいはずなのにさ。
なんか兄貴が気に食わない。イラつく、何なのホント。

俺は兄貴の部屋の前を素通りして、とりあえず自分の部屋に向かった。

キィ、と音をたてて開いたドア。
奥に広がるのはいつもの穏やかな俺の部屋。

血に濡れた着物を無造作に床に脱ぎ捨てて、新しい着物に着替える。

そんでもって窓際に座り込んで、一旦気持ちを落ち着かせる。

江戸の空から、サンサンと光り輝く太陽が見えた。
こりゃ積もってる雪も溶けるんじゃね。

静かに窓の外を見てたら、大分イライラも納まってきた。

『……寝よう、うん』

もういろんな事がありすぎて眠くなってきた。

そんな感じで、俺が日の光に当たりながらうとうとしてた時だった。


「稜弥殿、居るでござるか」


■━━…


泉菟が目覚めたのは、鬼兵隊宙船内の医務室のベッドの上だった。
パチリと泉菟が眼を開けると、4人の隊士達がずぅんと泉菟を厳つい顔つきで見つめているのが見えた。

「…な、何だ貴殿達は」

泉菟の第一声はそれ。
状況が飲み込めてない様で、不安そうな声だった。

「それはこちらの台詞だ」

隊士の一人が、眉間に皺を寄せながらそう低い声音で泉菟に言う。

「貴様、一体稜弥様に何をした」

その言葉に、泉菟の頭に「?」マークが浮かぶ。

「何を…と、言われてものう…」

泉菟は困り果てた表情をする。
そりゃ誰でも困り果てるだろう。

「とぼけるでないィィィ!!!」

隊士がドカンと怒鳴りつけた。

「稜弥様の着物が赤黒い血で濡れていたのはどう説明するのだ!!」

「そうだ! 稜弥様疲れ果てた顔をしていた! 貴様が何か稜弥様にしたのだろう!!」

「というか何故稜弥様に担がれていたァァ!! ずるすぎる!! 俺も担がれたい!! いやむしろ担ぎたい!!」

隊士の1人1人が一斉に泉菟に言われなき罪を着せ始める。
もちろん泉菟は何一つしていない。

中に1人変態が居たことは黙っていてほしい。

泉菟の頭上の「?」マークは、どんどんと増えていく。

ギャアギャアと騒ぐ隊士達。

今の泉菟にはどうしようも出来なかった。

しかし、

「五月蝿い」

と、医務室の右側から聞こえてきた声で、隊士達は鎮静化する。

スタ、スタ、スタと床を歩いてやって来たのがその声の主。

有城六助である。
有城は鬼兵隊の船医である。
主に外科の処置を得意とするが、最近は内科の事も勉強し始めた、あまり喋らないクールな男だ。

有城は手に持ったカルテで、バシッバシッとさっきまで怒鳴り散らしていた隊士達の頭を叩く。

「いでっ」「あたっ」「うおっ」「おわっ」と、順々に声を上げる隊士達。

「医務室であまり喧しくしてもらっては困る…」

有城はそう静かに言うと、隊士達を見やった。

「し、しかしだな先生、この者は稜弥様に…」

隊士の1人はうろたえながらも有城に反抗しようとするが、適わなかった。

「この者は俺が見ておく…。早く職務に戻るといい」

先生がそう言うなら…、と隊士達はゾロゾロと医務室から出て行く。
しかし、その視線はキツく泉菟に向けられていた。

有城はその日の気分で患者を手当てするか否かを決める。
例えそれが高杉であろうが稜弥であろうが、部外者であろうが部内者であろうが関係ない。
とりあえず自由奔放、猫のような性格。

そして、日頃の行いが悪ければ良い手当てをしてもらえない。
なので、隊士達は有城に不満を言えないのだ。

「す、すまぬな、助けてもらって…」

泉菟は少し頭を下げて有城を見やる。

有城は「…」と少し黙ってから、

「別に」と小さく返した。

そして。

「傷は右肩に直径3cm、深さ6cm…。稜弥様にしては浅い方だ…。命拾いしたな、お前」

と、うわ言に様に喋りだした。


■━━…