二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 紫弓 【銀魂】 ( No.3 )
- 日時: 2010/01/15 18:51
- 名前: 帽子屋 ◆8ylehYWRbg (ID: vtamjoJM)
- 参照: ——『殺さないで、って素直に言ったらどうだよ』
■━━・・・壱
「お願いしますッ!! 俺、昔から攘夷志士に憧れてて!! 皆さんと一緒に、この国を立て直したいんですッ!!」
彼の名前は山崎退。
真選組の密偵であり、只今隠密任務を遂行中だ。
過激派攘夷浪士達の中心組織、鬼兵隊に潜入し、次のテロ内容を炙り出すというもの。
「いきなりンな事言われてもよォ…、高杉様や武市様に聞いてみねェと・・・」
「その前に攘夷志士なんててめーみてェな甘っちょろい若造になれるわきゃァねんだよ! 帰れ帰れ!」
しかし、任務遂行といっても潜入できなきゃ意味が無い。
鬼兵隊宙船(そらふね)の門番2人は、なかなか山崎を通してくれないのだ。
桂の時と違ってさすが過激派攘夷衆というところか、簡単には潜入できいのである。
必死で頭を下げても、そう簡単に入れない事は山崎も承知の上で望んだつもりだったが、予想以上に疲れるものだ。
「頼みます、俺、雑用でもなんでもしますから…」
何分かが経過し、山崎がブンッと大きく頭を下げた、その時だった。
『ねぇ、何してんのお前等』
甲板の柵から身を乗り出した、1人の少年らしき人物が、ニヤニヤとした顔つきで山崎達を見下ろしていた。
「りょっ、稜弥様ァア!!」
「危ないですゥゥ! またそんな事してェェ!! 降りてきてくださいィィイ!!」
すると、門番の志士達は今までと血相を変えて、その青年に大声で言った。
『えー、降りるのー?』と不満げな口調の青年は、グッと足に力を入れ。
次の瞬間。
掴んでいた柵の柱を放し。
ピョンッと甲板から、なんと飛び降りたのだ。
「あ゛あ゛あ゛ァ゛ァ゛!!! 稜弥様ァァァア!!」
「何してんすかアンタはァアアア!!」
志士達はあんぐりと口を開け、もう海に落ちる寸前の青年に向かって叫んだ。
山崎もただポカンとしているだけであった。
しかしだ。
ザバアアア!! と大きな音を立てて上がった水飛沫と波が、門番達と山崎にかかったせいか。
なかなかその稜弥と呼ばれた青年の姿が見えず、ついには見失ってしまったのである。
海を見やっても、稜弥はなかなかあがってこず、ついには5分が経過した。
「ちょ、ちょっと、これあの人沈んじゃったんじゃ…」
山崎は不安そうに門番の1人に話しかける。
「お、俺ァ知らねェ、稜弥様が勝手に…」
門番のうちの1人は冷や汗をダラダラと流し、動揺を隠し切れずにいる。
その目はもう泳いでいるどころかクロールを始めそうな勢いだ。
「おいテメェ!! 一人だけ逃げようってんのか!? これが高杉様にバレたら、俺ら打ち首どころか惨殺刑に…」
もう1人の志士が言い終わらないうちに。
『えー? いくら兄貴でも惨殺刑にはしねーと思うよ? だって、俺の兄貴だもん』
またあの稜弥の声が、どこからともなく聞こえてきた。
2人の門番は、
「「うわァァァァア!! 稜弥様が化けてでたァァァアア!!!」」
と涙をザァザァと滝のように流しながら、船内へと全速力で逃げていった。
『んー? 行っちゃったなーオイ』
稜弥の声はその呟くと、
『おい、そこの、お前は何しに来たの? ま、聞いてたけどね』
と小憎らしく山崎に言い放った。
山崎はどこから声が聞こえてくるのか分からず、ただキョロキョロと周りを見渡していた。
「(何だアイツ、海に沈んだんじゃないのか!?)」
山崎の頭はただそれだけで、少し混乱していた。
下や上、左右もよくよく見回したが、さっきの青年の姿は見られない。
ヤバイ、どうしよう、山崎の頭はただただ混乱するだけだった。
『おまっ、こんだけ近づいても気付かねーなんて志士としては致命的よ? すぐ殺されちゃうよ? ほら、首元見てみろよ』
その声にハッと我に返った山崎は、首元をそっと見てみた。
山崎の背筋は凍るようにゾッとした。
山崎程の手練(てだれ)は、自分の後ろに相手がいれば即気付き、武器を当てられよう物なら即座に反撃するのだが。
山崎の首元には、紫色に妖しく光る弓矢の刃が突きつけられていた。
「お、お前は…」
『あー大丈夫だから、殺さないって。それよりさー』
稜弥は山崎の首元とから弓矢を放した。
そして、山崎の前に出て来た。
『さっきの聞いてたよっと。ここに入りたいんだってね。別にいいぜ? あー因みに俺の部下だけどね』
その容姿は、体が華奢で、美しい紫の髪をした、青年じゃなく、女だった。
山崎は目を丸くして稜弥を見つめる。
『山崎っていったっけ? これから宜しくな。俺の名前は高杉稜弥。高杉晋助兄貴の妹だよ。一応、運動神経には自信あるからさ、お前が着いてこれるか心配だけどさ』
稜弥はニコッと微笑んだ。
山崎は無事に潜入捜査を遂行出来ることができるのか。
山崎は、これから不安でいっぱいである。
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