二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 紫弓 【銀魂】 ( No.45 )
- 日時: 2010/02/26 19:54
- 名前: 帽子屋 ◆8ylehYWRbg (ID: vtamjoJM)
- 参照: ───『3秒後、アンタは俺に殺される』
■━━弐伍
高杉の部屋の前、稜弥は扉を開けるのをためらっていた。
稜弥は気が進まなかった。
任務を遂行できたとはいえ、何故か兄の高杉に会いたくなかったのである。
こんな感情は初めてだった。
泉菟は自分が想像してたより遥かに強かった。
「泉菟が入るという事は、鬼兵隊には大きな戦力が加入するという事」。
それが泉菟を拉致する目的だというのは稜弥も泉菟を見て納得した。
あの武器、身のこなし、全て常人では無いとも思っている。
だが、それでも、高杉は強い「女」というのを欲したことは一度も無かった。
「強い女は可愛げがねェ」ともよく言っていた。
「女」を欲する兄の事が気に入らないのだろうか。
このやきもきする感情は。
自分でさえも分からない。俺は一体どうすればいい?
稜弥の脳内はぐるぐると渦を巻いていた。
『…ま、行動を起こすに越したこたァねーや』
うだうだ語っていても仕方がない、と稜弥は覚悟を決めた。
赤いパネルに手をかざすと、自動的に扉は開く。
稜弥は生唾をゴクンと飲み込み、その華奢な掌をそっとパネルにかざした。
ウィーン、と機械音を鳴らしながら開く扉の奥に、今稜弥が一番会いたくない人が、居なかった。
『あ、あり?』
と、拍子抜けした声を漏らす稜弥。
『っかしーな、ここに居ると思ったんだけど…』
がらんとしたその部屋は、扉とは反対に、優しい雰囲気の和室だ。
その和室に、ふわふわと漂う紫色の煙。先ほどまで高杉が煙管を吹かしていたのだろう。
『・・・待ってれば、来るよな』
稜弥は脳内で勝手に決めつけ、しばらくその部屋で待つ事にした。
ストン、と畳に腰を下ろす稜弥。
ぼうっと虚空を見つめる稜弥の瞳に映っていたのは、妖しく消えていく紫の煙だった。
▼
カツ、カツと靴を鳴らして、カルテを片手に颯爽と歩くのは有城だった。
怪我人の診断書、
新しい武器の構造模型図、
薬のデータなど、難しい漢字や数字の羅列が書かれているその紙を真剣に見ながら。
その前方から、妖しい笑みを浮かべながら歩いてくる男が1人。
高杉である。
「よお、六助」
高杉は有城を見やるなり、そう呼びかける。
有城は軽く会釈すると、そのまま高杉の横を通り抜けようとした。
「待てよ」
それを高杉は低い声音で呼び止めた。
有城は足を止め、高杉の方に振り返る。
「…何か、用でしょうか」
怪訝そうな有城の顔。
高杉はククク、と喉を鳴らして、六助の耳元へと歩み寄る。
そして、小さな声である事を呟くと、静かに去っていった。
「……まったく、面倒な事を…」
高杉の姿が見えなくなったところで、六助はそうボソリと呟くのであった。
■━━…