二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ■━…紫弓 【銀魂】 ( No.48 )
日時: 2010/02/26 20:45
名前: 帽子屋 ◆8ylehYWRbg (ID: vtamjoJM)
参照:    ──『真実を探しただけで、お前に何の得がある?』

■━━…弐七


それはすごくすごーく昔の事だ。

兄貴に拾われ、攘夷戦争にも少しだけ、俺は参戦した事がある。

兄貴とか銀時とかヅラとか辰馬とか、皆と俺の部隊は違っていた。

東西南北いろんな所から迫り来る天人どもを、俺は俺なりに一生懸命ぶっ飛ばした。

でも、その時の俺の戦闘技術、能力なんて蟻んこみてーなモンでさ。
刀の使い方は滅茶苦茶、
前の敵しか見ちゃいなくて、
防御の仕方なんて知らねーで、
ただ敵を蹴散らす事だけに精一杯だった。

雨で濡れた戦場の足場も悪くてさ。
カッコ悪く滑っては、顔面泥まみれにして、呻き声あげたっけ。

まぁそんな俺だから、真後ろに敵がいることなんて気付きもしなかった。

大きな巨体の亀みてェな顔をした天人は、大きな太刀を俺の頭の上一直線に振り下ろしてきた。

正直、あのままいってたら避けられなかった。

俺の頭をその太刀が一直線に引き裂いてさ、見るも無残な死に様だったろうよ。

けど、そんな時に。凄く丁度良いタイミングで。

俺は誰かに服の襟をグイッと掴まれ、ポーンと投げられた。

今思えば凄い馬鹿力だよね。片手で女投げられるんだよ?

投げられた俺は地面に叩き付けられる。
案の定泥んこまみれ。

『いってェ…、何しやがんだコラァ…』

小さく吼えた俺。
大きな声出す気力なんて、その時の俺には無かったからね。

顔を起こして前を見ると、一番に目を見張ったのは藍色の髪だね。

凄く爽やかに光るその藍色の髪は、一つに纏められていた。

「貴殿は一体どこを見ておるのだ!! よもやここは戦場であるという事を忘れたわけではあるまいな!?」

その藍色の髪した奴は、明るくも重みのある真剣な声で俺に怒鳴った。

へとへとのボロボロである俺と対照的に、そいつは凄くぴんぴんしていた。

俺を殺そうとしてた天人は、そいつの登場に少し驚きながらも、

「死に損ないの屑一つ救ったところで、この玄武丸に勝てる訳がない!! せめてもの情けだ、冥土の土産に、この玄武太刀であの世へ送ってやろう!!」

なんて強がりを言って見せた。

俺も、藍色のソイツが、この天人に勝てるとは思ってなかった。
俺自身もここで死ぬかと思った。

だけど、そいつは違った。

「冥土の土産? 我は甘味以外の物は土産として貰わぬ主義なのだ。そもそも、まだこの我は、冥土に行く気など毛頭無い」

真剣なのかギャグなのか分からんその言葉に、俺も天人も「あ?」と声を漏らした。

そいつは藍色の扇子を手に持って、大きく天人に振り翳す。

「貴様が屑と呼んだ我等に倒される貴様は、屑以下の存在となろうな。冥土で恥でも掻くと良い。さあ、藍(あお)い風と共に地に果てん」

そう呪文の様に呟いた藍色のそいつは、翳した扇子を力一杯天人に向かって仰いだ。

天人がふわりと浮いたと思えば。
音速を超えてんじゃないかぐらいの速さで、遠くへと吹き飛んでいった。

俺が口をあんぐりと開けて見ていると、そいつは俺ににこりと微笑んだ。

「さあ、休憩はできたかのう? また暴れるぞ」


■━━

昔のことを思い出してみると、結構時が経つのが早い気がした稜弥。

そういえば、昔俺を助けてくれた藍色の奴、俺が今日連れてきたのと似てたなぁ。

なんて稜弥が気付くのは、まだ先。

すると、ウィンと扉が機械音を出して開いた。
ビクッと肩を震わせる稜弥。

高杉が来たのである。

稜弥は、『やっと来たあー…』と脱力した声を出す。

「クク…、待たせたかァ?」

『待ちましたともー』

いつのまにか稜弥の機嫌も直っていた。
高杉は稜弥の横に座ると、稜弥の頭をがっと掴んだ。
そして紫色の髪をくしゃくしゃにしてしまった。

『ちょっ、いきなり何すんの!?』

顔を赤くして高杉に抗議する稜弥。

高杉はクク、と笑う。

「しっかり連れてきたようじゃねェか。おめーに頼んで正解だったぜ」

と、稜弥に優しく言った。

久しぶりの高杉の褒め言葉に、稜弥の顔を赤みも増す。

そして稜弥はふと思うのだった。
『あれ、俺何怒ってたんだっけ』と。


■━━…