二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 紫弓 【銀魂】 ( No.5 )
- 日時: 2010/01/15 18:53
- 名前: 帽子屋 ◆8ylehYWRbg (ID: vtamjoJM)
- 参照: ——『殺さないで、って素直に言ったらどうだよ』
■━━・・・弐
『で、ここが会議室で、あっちが甲板な。船の中は大体これくらいだからよ、今日は俺が呼ぶまで部屋帰ってろ。さっき教えただろ?』
大体船の中を山崎に案内してやった俺は、そう言って休むように促した。
部下が出来たのが始めてで、凄く今嬉しいんだ。
俺に任せると滅茶苦茶にされていけないって、武市とか俺に部隊任せてくんなかったからさ。
まぁ現に山崎を部下にしたっての内緒だからな。
山崎は元気よく「はいっ」って言って、俺がさっき教えた自分の部屋に行った。
上司になったからには、とりあえず部下に好かれて尊敬されるようになりてーな!
あー嬉しい!
ここでリンボーダンス踊れるくれェ嬉しいよ!
踊ろうか? もうここで踊っちまうか?
アハハー・・・テンション上がりすぎて怖いわ俺・・・
こんな昼間からこんな気持ち悪いテンションでいいのか?
『これでやっと兄貴に馬鹿にされずにすむぞー!!』
俺は大きく手を広げて、万歳の格好になった。
しかし。
「ククク…、随分と妙に騒がしいじゃねェか、稜」
後ろから、俺が随分と聞きなれてる腹立たしい声が聞こえてきた。
俺は思わず『げっ!!』と阿呆みてーな声を出す。
俺が振り返ると、そこには。
女物の着物着て、煙管を吹かして、妙にエロスオーラが出てる。
『兄貴・・・』
俺の兄貴、
高杉晋助が、ニヤニヤとしながら俺を見てた。
『い、いつから見てた?』
「見かけねェ顔の奴が返事した所から」
『ほとんど全部じゃねーか!!』
ビシッと突っ込む俺に、兄貴は冷ややかな目をした。
うわ、傷つくよ、俺。
ククク、と笑った後、兄貴は煙管を吹かした。
「テメェに部下なんて必要ねェだろ? 何故俺の了解も得ずに勝手な事してやがる」
紫色の煙をフーッと吐いて、俺に低い声で言った。
『必要ない事はねェよ! また子や似蔵はたくさん部下持って、その上部隊だって任されてるじゃんか!』
「お前は鬼兵隊の副首領だ。腐るほど部下持ってんじゃねェか」
『それは兄貴もだろ! 俺は、俺だけの部下が欲しいんだ! それに、他の奴等は・・・』
はっ、と我に返った俺。
今、ここで兄貴にいろいろぶつけても、何もなんねェし。
俺は一旦心を落ち着かせた。
『・・・いや、別にいいよ。でもアイツは、山崎は俺が一番に見つけたんだ。俺がアイツの上になる』
兄貴にそう言うと、俺は兄貴の横を通って、奥の扉を開けて甲板に入ってった。
■━━・・・
兄貴が俺の事、信用してくれてるのは分かってる。
俺に部下なんて持たせなくても、一人でなんでもやってのけるって、信用してくれてるとは思ってるよ。
でも。俺は。
兄貴みたいに、人に頼られたことが一度もない。
兄貴は皆に頼られるけど、俺は「鬼兵隊の副首領」とか「高杉晋助の妹」って、名前だけで飾られる。
それで皆、俺の実力も知らないくせに、余所余所しく敬語使ったりするんだ。
俺はそれが嫌だ。確かに学なんて俺には無いよ。
兄貴みたいに作戦なんて立てられないし、武市やまた子みたいに大勢の人間を纏められる能力も無い。
けどさ。俺だって強いよ。
皆に頼られるような、凄い人間になる素質はあるはずなんだ。きっと。
人を、部隊を、任せられないのは何故なんだろう。
何回も思ったけど、答えは見つからないし。
でもさ。1人の人間ぐらいに、頼られたい。
尊敬されたい。歓心されたい。
俺は憎いほどの青空を仰ぎ見て、深すぎるため息を吐いた。
■━━・・・・・・