第1段『朽木家』;白夜 第一話 緋真の命日(前日)ー 月夜の中。 大きな満月が庭の池にうつる深夜、私は目が覚めた。晩春の心地よい風がふすまの隙間から入ってくる。『もう、春も終わりか』 緋真の命日が近くなると毎年、緋真の夢を見て起きるようになった。『……緋真がいなくなってから、どのくらい経つのだろう』ため息とともに、また深い眠りについた。 ぽっかりと池にうつる満月の真ん中に、風に乗った桜の花びらが一枚落ちた。