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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【銀魂】−白い絆− ( No.1 )
- 日時: 2009/10/01 17:17
- 名前: 暁月 ◆1pEIfYwjr. (ID: mdybEL6F)
何もかも、失くしてしまった。
否、自分で捨てた。怖くて仕方が無くて。
月姉や日輪の姉様との約束を破ってまで、外に出たかった。優しくしてくれた、人たちをも捨てて。
けれど、夜七と同じ世界を生きたかった。
ただそれだけの為に、手を赤に染めて人を殺めて。
何があろうが、生き延びてやると誓い、只管に歩き続けた。
一、雨と
雨が降り出した。雲行きが怪しいと思った途端に。
ちょうど良かった。汚い天人の血を洗い流したい。
だけど、べっとりと着物に染みついた血は雨如きでは綺麗にならなかった。
はぁ、と溜息をついても何にも変わらないのに。
路地に入って空を見上げて。雲で蒼い空は見えない。当たり前だけど。
辺りを見回しても誰もいない。今日はここで夜を過ごそう。
壁に凭れ掛かって目を閉じた。
さっきまで身体に当たっていた雨粒達が突然当たらなくなった。
もう雨やんだのか、って思ったけれど違う。ざぁざぁと雨はまだ降り続いている。
誰かが自分に触れて、揺り起そうとする。
ぱちり。目を開けると傘を差した、綺麗な亜麻色の髪をした男の人。
「こんな所で寝ていると、風邪を引きますよ」
にっこりと笑ってそう言った。女の人の様な笑顔。
腰には刀。この人も、侍?
「見たところ……君は独りなのかい?」
こくり、と頷く。
その人は懐から手拭いを取り出し、頬にこびり付いた天人の血を拭ってくれた。
「私についておいで。こんな所に居たら、危ないよ」
と言って手を差し伸べて。
怖いとは思わなかった。だって、夜七と同じ匂いがする。
そしてその人と手を繋いで一緒に傘に入って雨の中、暫く道を歩く。
繋いだ手がとても温かくて、こんなに落ち着いたのは本当に久しぶりだった。
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