二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】−白い絆− last up.091104 ( No.12 )
日時: 2009/12/25 18:26
名前: 暁月 ◆1pEIfYwjr. (ID: mdybEL6F)

 零が熱を出してから暫く経ってのことだった。すっかり元気を取り戻した彼女は今、銀時達と外へ遊びに行ってるが、只一人松陽の元に残されたのは晋助だった。
 なぜこのような事になったのか、というと先日零の額に口付けた晋助は、小太郎からその事を聞いた彼女に頬を殴られたのだった。本当に、ただそれだけ。
 零にグーパンチされる等と、彼は考えもしなかった。別に殴るほどの事じゃないだろうと。たかだかでこちゅーしただけだろう。今朝、零のバーカと言っただけでまた頬を殴られた。
 
 じんじんと頬を真っ赤に染めながら、晋助は松陽の前でちょこんと座っている。その表情からは反省の色は見られない。間違いなく俺を殴ったのは零だ。手を出しちゃダメなんだ。俺は手を出してない。俺は悪くない悪くない悪くない悪くない……。祈る様に松陽が話すのを待ち続けた。


「何処であんなの覚えて来たのですかねぇ」


 くすくすと笑う様に松陽は言った。はぁ?と晋助は素っ頓狂な声を出し、それきり暫くは口は開けっぱなしだった。


 十、紅蓮の炎-① 



「次は銀時が鬼ー!」

 けらけらと笑いながら銀時を指差し零は笑う。小太郎は彼女の傍でそれ以上に笑っている。銀時にとってはそれが不愉快でならなかった。
 
 たかがかくれんぼ、されどかくれんぼ。

小太郎達に馬鹿にされたのに腹を立てたのか、早口気味に20秒数えた。
 
 「ちくしょー…」

 銀時は小さく呟くと着物の袖を肩の近くまで捲り上げ、傍の木陰から探し始めた。





 零は、銀時が居た場所から少し離れた草叢の中に隠れていた。零は目が良く、此処から銀時の姿は丸見えだった。

「私は見つかんないかんねぇぇぇ」
 出来るだけ声を上げないように笑い、顔を少し覗かせたその瞬間だ。零を黒い影が覆った。

「貴様は、この寺子屋の子か」

 背筋が凍りつく程の、冷たい声だった。金縛りに遭ったかのように身体が言う事を聞かなくなった。冷たい声の主は、深く編笠を被り、日の光から全身を護るように真っ黒のマントを羽織っている。編笠の所為で顔は良く見えなかったが声から察するに男だろう。
 はぁ、はぁ、と短く息を吐き、カタカタと小刻みに震える零。今や彼女の瞳には恐怖しか映さない。


「人が聞いておるのだ。答えたらどうだ、小娘」

 今にも刀を抜き斬り捨てるような気迫だ。無理矢理にでも声を出そうと、零は必死だった。



 声を出すのに二、三分も掛らなかった。しかし零には至極長い時間の様に感じた。


「……前はッ……何者……だ…」

 途切れ途切れにしか声は出なかったが、全く出ないよりかは幾分マシだ。男の質問にはさらさら答える気が無い零に腹を立てたのか、男は少し怒った口調で話す。

「まぁいいわ……此処で斬る等勿体無い」

 くるりと零に背を向けその場から去っていった。途端にずしり、と身体が重くなった。息をするのも儘ならない。

 あの男からは、恐怖しか感じなかった。

 ほんの一瞬、目が合っただけで自分が斬られる光景が目に浮かんだ。けれど。


「…どっかで……会った…かも………」
 
 少し咳込んで、ぐらっと視界が歪んで零は倒れ込んだ。
 自分を呼ぶ声を聞きながら——