二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【銀魂】−白い絆− last up.091007 ( No.5 )
- 日時: 2009/10/14 19:34
- 名前: 暁月 ◆1pEIfYwjr. (ID: mdybEL6F)
五、一人で
「何か用」
目を合わす事も無く、零がそう銀時に言い放った。気付いてやがったのか、と銀時はバツの悪そうな顔をした。そして、さっさと出て行ってよとでも言いたげな零。
別に、と一言返事をして自分が座っていた場所のすぐ近くに落ちた飴を拾い上げた。しかし、拾った飴は二つもあった。……何でこんな時に二つもあんの。
ここはお兄さんらしく、「飴、一ついるか?」と声を掛けたが、零は少し間を置いて首を横に振った。何つーガキだチクショー。お兄さんに恥かかす気か。
「あんた達は、松陽先生の事が好きなんだね」
ふいに零がそんな事を言った。自分は、あまり好きではないと言うような感じで。
銀時も晋助も小太郎も塾生皆、松陽のことを父のように慕っている。銀時や零の様に拾われたものもいる。普段からニコニコしている松陽は近所でも評判が良い。近所、と言ってもこの辺りにそんなに人がいる訳でもないが。
そんな先生だ、人に好かれる事はあっても嫌われる事は絶対ない。頑固な所もあるけれどとても優しい人だ。
「お前は…先生に拾って貰って……それなのに、嫌いなのかよ」
口が勝手に動いた。脳で考える前に。零には何を言っても無駄なのに。
「嫌いじゃない」
「なら、何でだよ」
間髪入れず零に問い返すと、少し、黙って
「先生が、大事になるのが嫌なの」
どういう事だと、また問い返す。そのうちに零は俯き、ぎゅっと拳を握った。
「大事な物はいつか無くなってしまうから。何も失くさない様に、一人で、強く、生きたいの」
いつの間にか零の真っ黒な瞳からは、ぼろぼろと大粒の涙が毀れ落ちていた。
ああもう、このガキは。
なんにもわかっちゃいねぇ。大事なもの抱えてなければ死んでいるのと同じなんだ。一人で生きてちゃ強くなんかなれやしないんだ。
俺は、その大事なことを、先生に教えて貰ったのに。
「だからもう関わらないでよ!」
必死に大きな声を出して、気がついたら走り出していた。教室を出て、外に出て息が切れたらすぐ近くにあった木に凭れ掛かった。
何でよ、何で涙が出るのよぅ………。
いくら拭っても拭っても、溢れ出る涙。悲しくなんかないのに、何で……。
零はそのあと日が沈んで真っ暗になってもずっとそこで涙を流していた。