二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】−白い絆− last up.091103 ( No.9 )
日時: 2009/11/04 22:42
名前: 暁月 ◆1pEIfYwjr. (ID: mdybEL6F)

「でだな、此処を撥ねて此処で止まって——」

「…………分かんないす」


 零はダラダラと冷や汗を流しながら俯いた。横で晋助と銀時は、はぁ…と溜息を吐いたり、笑いそうになると小太郎に目にも止まらぬ速さで叩かれた。
 しゅん、と小さく成って行く零。貴様らが余計な事をするからだ、と言いたそうに小太郎は銀時達を睨みつけた。


「文字の読み書きぐらい覚えないと」

 さらさらと零の描いた文字の横にお手本としてひらがなを書いていく小太郎。その横で銀時は教える側であるのに関わらずほーほーと感心するばかり。
 晋助に至っては零の髪の毛に触ったりこそばしたりとちょっかいを掛けてばっかりだった。

 大丈夫なのかな、こんなので。



 九、頑張った証




それから何時間か経った頃。


「う〜……」

 呻いた後、ばたん!と零は机に突っ伏した。何かあったのか、と小太郎は心配して顔を覗きこんだ。
 真っ赤になった顔、しんどそうに眉根を顰めてはーはーと荒い息を繰り返している。そっと額に手を添えるといつもより熱かった。


「大変だ、銀時、高杉!起きろ!」

 部屋の隅で寝ている銀時と晋助を叩き起こした。あたふたと慌てる小太郎を見て、二人は飛び起きた。
 普段から沈着冷静な小太郎が慌てていると言う事は何か大変な事が起きたに違いないと、二人は思ったのだが。


「零の様子がおかしいんだ………」

 どうしようどうしようと慌てふためく三人の前に松陽が現れた。


「部屋で暴れてはいけませんよ……って、零に何かあったのですか!?」

 机に突っ伏した零を見て松陽は驚いた。急いで零を抱えあげるとバタバタと足音を立てて廊下を走っていった。その後を金魚のフンの様についていく銀時達。








「大丈夫です、知恵熱ですからね。小太郎、落ち着いて」

 布団を二枚ぐらい重ねて零を寝かせ、その額に濡れた手拭をのせた。
 それからぐすぐすと今にも泣出しそうな小太郎を上手く松陽は宥めた。銀時と晋助は小太郎ほど取り乱したりはしなかったが、とんとんと貧乏揺すりを繰り返す。


「ちえねつって何?せんせー?」

「あー…何と言うか…」

 銀時にそう聞かれて松陽は言葉を濁すが、うーんと暫く考えこんでから

「頑張った証……みたいなものですかねぇ…」


 何でこんな形でしか頑張った証は表れないのだろうかと晋助は思った。その後何を思ったのか晋助は零の額の手拭を退かせ、そのままちゅっと音を立て、その額に口付けた。


「……………」

「………何か文句でも?」


 その場にいた全員凍りついてしまった。松陽でさえも口を開ける事が出来なくなった。口元を緩ませながらもう一度晋助は言った。


「零の頑張った証だから。勘違いすんなよ」

 次の日小太郎の口からその事を聞いた零から殴られるなんて晋助はまだ思いもしなかったのだが。