二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: — 涼宮ハルヒの嫉妬 — ( No.15 )
- 日時: 2009/10/31 09:43
- 名前: song (ID: p17IpJNR)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.php?mode=view&no=12630
ここは一歩引くべきか押すべきか……ひよりを気にする余り、俺はドアを開けながらも一層悩んだ。ほんの一瞬だけ……
本当ならもっと悩んでからでもよかったのだが。
「こんばんは」
そこにいたのは紛れもないハルヒだ。チェック柄のミニスカに分厚いコートと紺色のマフラーを羽織っていた。しかし、今ひとつ声に張りが足りてい。それはなぜか、俺には分かりかねる。
俺は多大な違和感を覚えた。
「どうした……? らしくない」
普段が普段だけに少し心配だ。
「え? あ、何か変かしら? 」
変も何もお前は元から変だ。正しくは変じゃなくなった……か?
俺は心の中でツッコミを入れたが、それを言葉にする勇気はない。爆弾の導火線で火遊びする気はないからな。
「いや、なんでもない。出かけの準備は出来てるから行こうぜ? 」
俺はハルヒをせかした。
「慌てなくても時間はあるわ。のんびり行きましょう? 」
そう言ってハルヒは徒歩を後ろへ進め俺の裾を引っ張った。
「お、おう……」
神妙な気配で何となく分かったが、ハルヒなりに照れているのだろう。
クリスマス・デート。はっきり言ってこれは日本だけの風習っていうか習慣だ。神仏習合の集大成とも言えるだろう。本来クリスマスは厳粛に教会で行われる年末の最大イベントだ。下手すりゃ正月よりも大切な行事だとか。古泉の言ったことを真に受けるのは癪だが、俺自身少し不思議に思っていたことだ。
『本番を前に盛り上がり過ぎないように……』
考えたくないが「盛り上がり」とはデートを指し、本番とは……——まぁアレだ。
「さっきからずーっと黙ってるけど、どうかしたの? 」
考え事の最中、おぼろにハルヒの声が突き刺さった。
「あぁ、悪ィ……で、何だって? 」
「全く……これからちょっと寄りたい店があるから、付き合ってくれる? 」
雰囲気とムードに合わせつつ、ハルヒは俺をあちこちに連れまわす気なのだろう。実にハルヒらしい一方的なデートだ。
「りょーかい」
含み笑いを浮かべながら俺は答えた。
「ほら、ちゃんとエスコートしなさいよね! 」
家の前では大人しかったが、少し開けた町並みが除いた瞬間、同時にその勢いが戻ったのだろう。俺はふとそんなことを思っていた。すると——……
「ん? 」
俺の目の前には差し出されたハルヒの手が。
「早くしてよ……手が冷えるわ」
口元をマフラーで隠しながらハルヒは言った。
そして、俺は頭の端で俺自身、まだ何もハルヒにアプローチしていないことに気がついた。ハルヒはちゃんとアプローチしたのだが……
何はどうあれ俺はハルヒの行動に無言で答え、その手を握った。
「さ、行きましょ」
俺が思っていた以上にハルヒの手は冷たく、小く感じた。