二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: D.Gray-man †運命の歯車† ( No.22 )
日時: 2009/12/06 22:39
名前: 悠 ◆FXzmrZiArI (ID: w3Re2V0V)

     † 第二章「操り人形」  第二夜 †


 「ねぇ、兄さん」
 「どうしたんだい?リナリー」

面倒臭そうに任務に行ったヴァルを見送ってから、
少したまっている書類を片付けながらリナリーが言った。
その声は少しだけ小さいように思える。

 「ヴァルっていう一族はヴァルに関係ないよね……?」

本気でそう思っている訳じゃない。でも、心の奥のどっかでそう思ってしまう。
声は少しだけ震えているが、リナリーは真っ直ぐに兄を見る。
関係ない、という安心できる言葉を欲しい。ただ、それだけだ。

その真摯な瞳に少し視線を逸らしてしまう。マグカップに入ったコーヒーを見つめる。
黒い水面には返事に困る自分の顔が映る。
だが、自分もそんなことは無いと思っている。本心から思っているはずだ。

 「……ヴァルは関係無い。それに、あの一族は滅んでいる。ずうっと昔に。
  今、なんでここにいるかは分からないけれど……。
  あんな面倒臭がり屋が関係あると思う?ボクはそう思わないけどね」

リナリーに、いや。自分自身にも暗示をかけるように。ゆっくりと言っていく。

 「そう……ね。そうだよね」
 「そうだよ」

なんとなく、心が満たされていくように感じた。
不安が少し減った。安心が少し増えた。

 「あの面倒臭がり屋だもんね」










汽車の中で不機嫌というか面倒くさそうな面をしてヴァルは資料を読んでいた。
場所はスペイン。
滅茶苦茶遠くは無いが、さほど速くも無い汽車で行くのは面倒臭い。
それに、遺跡の調査というヴァルには無縁の内容の任務。
面倒臭いという言葉意外に表しようがあったら是非教えて欲しいものだ。

 「あー面倒だなこの任務。このままサボッちまおうか……」

いつまでも続く同じ景色を見ながらぼやく。ヴァルが言うと全く冗談に聞こえない。
すると、半分思考が停止した脳にコムイの野郎が出てくる。

 「ヴァル君、それは冗談じゃないよね?」

どっからか銃器類を出し、こちらに向けて今に撃とうとしている。
背中がゾクッとして振り返るが、勿論後ろは座席である。
頭を軽く振り、頭の中のコムイを吹っ飛ばす。

 「あー早く帰りてぇ」

汽車はもうすぐスペインへ入ろうとしていた。

 
                          つづく