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「……で、雨宮は……？？」

翼先輩は慎重に聞いた。

「……連れ去られた……」

棗は小声で言った。だが、今はもう皆棗の話に聞き入っているので教室中に広がった。

「つ、連れ去られたやんて〜〜〜！？！？！？！？」

翼先輩は驚きすぎて声が出なかったけれど、それを代弁するかのように蜜柑がドでかい声を出した。

「……あぁ……」

棗は蜜柑の声のあまりの大きさに顔を顰（しか）めながらも答えた。

「そ、それで……それで……い、イオちゃんは……」

蜜柑はいきなり不安になったらしく、オロオロし始めた。

「蜜柑、落ち着きなさい。」

蛍が蜜柑のおでこにペタッとシールを貼った。

それは精神安定シップあった。シールにはニッコリマークと下のほうに落ち着けと書かれていた。

蜜柑はキョトンとした顔をしていた。

「……で雨宮が連れ去られたのはわかったけど……なんで俺なんだ？？他にもいっぱいいるだろ？？」

翼先輩は教室中を見回した。

「お前じゃなきゃ駄目なんだ……」

棗はそう答えただけだった。

翼先輩は『分からない・・・』と言う顔でまだ教室中を見回していた。

「あっ！！ま、まさか……雨宮が連れ去られた場所って……」

殿先輩が思い出したように声を上げた。

「……“影牢”か？？」

殿先輩はそう言ってゴクリと固唾を呑んだ。

「……あぁ……」

棗はそれだけ答えた。

「なんだ？？その“影牢”？？って……」

翼先輩は何も知らないみたいで首をかしげていた。

「俺も噂でしか聞いたこと無いが……」

殿先輩はそう前置きをして話し始めた。