二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン〜大江戸イレブン! ( No.35 )
- 日時: 2010/06/02 16:06
- 名前: ゆうちゃん (ID: 66DLVFTN)
第九話『法師の消失と国の長』
…………。
……………。
「あの〜、師匠?」
マッハが呼んだ。
「師匠……?」
二回目。
「エロ法師!」
「エロじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」
佐久間は思いっきり叫んだ。
周りの人達が驚いてあとずさった。
「師匠、よかったー寝ているのかと思いました」
「くっそー、あのガキ!またエロエロエロって!!」
佐久間はぶんぶんと首を振って、宮坂をさがす。
……が、どこにもいない。
「くっそー、いつの間に逃げ足速くなったんだ。さては影分身でも……いや、まさか」
「あの、師匠。……お気に触りました?」
佐久間はマッハの方を見る。
「……」
「あ、はい。すみません。……私です」
「…………まぁ、ともあれだな。治すだけなおしたぞ」
佐久間は目の前で落ち込んでいる円堂に言った。彼の後ろでは生まれてはじめて佐久間に殴られたマッハが、「宮坂はいつもこのようにして、さとりをひらかれているのか……」などと言っていて、その横では宮坂がくすくすと笑う。
豪炎寺の怪我は軽いものの、夕香ちゃんのほうは眠ったままだ。
「……そっか。ありがとな。佐久間」
円堂は佐久間に金をだそうと、懐をあさった。
だが、佐久間は珍しく、手を突き出すと
「……いい。金はいらない」
そう言って、丁重に断った。
「今は金とか何とかいってられねえんだ。俺も……どうやら縛らないといけない相手が出てきたみたいだからな……」
空を見上げる。
昨日の大騒動など嘘のように晴れ上がっている。
しかし、佐久間には違う景色に見えていた。
今まで僧として旅をしてきたことによる、勘が何かを訴えている。
—————今までと違う何か……
何かがこの江戸で起ころうとしている……。
その時、何かがはなをくすぐった。
敏感な宮坂はすでに気づいていたようだ。気持ち悪いのか、はなをつまんでいる。
花の香の臭い……忘れるはずがない。
さっと、後ろを黒い影が通った。
(相変わらず、変わったものが好きだな……あいつは。)
「円堂、そろそろ失礼する。」
佐久間は円堂に一礼した。
「なんだよ、もう行くのか」
佐久間はふっと、微笑を浮かべた。
「……俺を待ってる奴がいるみたいなんだ。……円堂」
くるりと踵を返して円堂に背を向けるとつぶやいた。
「……死ぬなよ。大きな戦になる」
「……え?」
佐久間の声は小さく、聞き取れなかった。
円堂が顔を上げたときには、佐久間の姿は無かった。
そして、彼の立っていた場所には一枚のかみと、佐久間の数珠。
『この数珠を源田と鬼道に渡せ』
「……佐久間?」
円堂は数珠をじっと見つめた。
ふいに肩を叩かれ振り向くと、風丸がいた。
「風丸……」
「……円堂、何も言うな。城に行くぞ。そこの五人も」
佐久間においていかれたマッハと宮坂、それにけが人を運んでいた、ヒロトと南雲と涼野に声をかけた。
「かぜま……」
「何も言うな……ついてこい。……渡すんだろ?その数珠」
風丸は強引に円堂の手を引くと走り出した。
その後姿は、いつもの友人の風丸ではなく……
城へと走る、国の皇子の姿だった。