二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: しゅごキャラ×鋼の錬金術師 *あむの旅*  ( No.74 )
日時: 2010/01/09 15:26
名前: 瑠美可 ◆rbfwpZl7v6 (ID: 2zWb1M7c)

「ふふふ……それはどうかしら?」

 突如として、背後から声がした。若い、低めな女性の声。驚いて振り向くと、牢屋越しに一人の女が立っているのが見える。

 黒いフードを目深に被り、顔を見えなくしている。裾が地面につくほど、長いコートを着ていてやはり全身を覆い隠している。
 彼女を見ていると、あむは変な感じを覚えた。心臓の鼓動がはっきりと聞こえる。体中の毛穴が開き、そこから一気に汗が濁流のようにこみ上げてきた。汗が流れる感じがし、全身が冷えていく。

「だ、誰あんた……」

 恐ろしさを感じながら、あむは低い声で女に問いかけた。ランとミキの表情も険しくなる。

「私? 知りたかったら、その牢獄から出ていらっしゃい。お姉さんと話をしましょう?」

 随分甘ったるい口調だ。まるでバーのホステスのようだ。
 からかわれたあむは、むっとしながらも身体を横にした。歪んだ鉄の棒の間を通り、女の前へと立った。 ランとミキも後から続くが、あむと違い楽々通り抜けた。

「あら、えらい」

 からかう様に、黒衣の女は拍手をした。
 何か企んでいるのか、フードの下から見える唇が不気味な程にやついている。

「じゃあご褒美に教えてあげる。この村では数ヶ月前に大量殺人事件があったのよ」

 言いながら、女は片手で何かをあむに投げた。
 それは新聞だった。この世界の言語は英語らしく、aやb等の文字がずらずらと並んでいる。新聞なので文字はかなり小さめだ。
 
 本来あむは英語は苦手なはずだが、この世界に来た途端、急に理解できるようになってしまった。何故かはわからない。ファンタジーのように、異世界に飛んだショックから、なのかもしれない。

「えっと本日未明、ルクの村にて殺人事件発生。村人31人全員が死亡……犯人は、ルクの村民 ジュリエット・ガーギャ氏(25)。後に自殺?」

 そこまで言ってあむは、新聞の顔写真に目をやった。
 黒い髪の女性だった。鼻が高い美人な顔立ちだ。しかし、目つきは鋭く、いかにも事件を起こしそうな顔をしている。
 待って……今。目の前にいる女は? フードから見える髪は黒。まさか!? あむがそう思ったとき。

「!」

 急にあむは口元にハンカチを当てられてしまった。
 抵抗を試みるが、もう片方の手で身体を押さえつけられ逃げられない。

「うふふ。ジュリエット・ガーギャって、誰のことだと思う?」

 いつのまにか黒衣の女がフードを取り払っている。そこにあった顔は……新聞に載っていたジュリエット・ガーギャその人だった。
 ジュリエットの血のような赤い瞳が、囚われたあむを映しこむ。

 ジュリエットはあむの口元を覆う手を、さらに上に動かした。ハンカチがとうとう鼻まで覆いつくす。
 息が出来ない。苦しい。あむは必死に身体をばたつかせた。だが。
 ハンカチから何か臭いがした。それを嗅いだら、景色が薄くなり始めた。ランとミキの声が、やけに遠く感じる。息が出来ない、苦しさもない。

(やばい……あたし、どうなるの……)

 そう思っていたら、視界が暗くなった。
 テレビの電源を切ったかのようだ。

〜つづく〜