二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: バトル・テニス-バトテニ- ( No.23 )
日時: 2009/12/23 14:38
名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)

 37 幕開け




「はーい、12時になりましたァ 放送の時間だよ〜」(中務)

森の中を歩いていると、放送が始まった。
3日目も、もう半分が過ぎたということだ。

「まずは死亡者ッ 立海大付属、丸井ブン太、ジャッカル桑原、柳生比呂士・・・位かな。
 後は、禁止エリアね。 A-10、C-2・・・」(中務)

「これで、立海は俺と真田副部長と幸村部長だけか・・・」(赤也)
「赤也・・・」(香澄)
「青学は、まだ結構無事みたいじゃん」(赤也)
「うん」(香澄)

2人が話しているのを聞きながら、何気なく森の中を見た。
不意に、足が止まる。

何だ? アレは。

目をこらす。
木の影になって、よく見えない。

アレは・・・あの人影は・・・樺地・・・?

「跡部さん? どうかしたんッスか?」(赤也)

「・・・樺地」(跡部)
「え?」(赤也)

「樺地ッ!!!」(跡部)

そう叫び、跡部は森の中へ走り出した。
香澄達には何も告げずに。

「あ、跡部さんッ?!」(香澄)

香澄が呼んでも、振り返りもしない。
香澄に見えたのは・・・—————涙だ。

「待って下さい、跡部さんッ」(香澄)
「俺たちも行きま————・・・」(桃)

「来るなッ!!」(跡部)

桃の言葉を遮り、1度も香澄達を見ないで跡部は言った。

「絶対に、着いてくるんじゃねェ。 お前らには、音で合流する」(跡部)


ついさっきまで、助け合っていたのに。
支え合って来たのに。
突然突き放されてしまった。
何か理由があるのだろう。
その理由を、訊きたかった。
それなのに、跡部は走り去ってしまった。

「跡部さん・・・」(香澄)
「樺地に、何かあったんだろう」(桃)
「だろうな。 血相変えて走って行ったもんな」(赤也)
「ッけ ヤツを信じるしかねェだろ」(海堂)
「うん」(香澄)

あの涙の意味が分からない。
いつでも自分を支えてくれた、跡部の涙。
“泣くな、笑え”そう言ってくれた、跡部の涙。
香澄は、心配で仕方なかった。

「うっし、取りあえず、この近くにいる3人を探そうぜッ」(桃)
「そうだな」(赤也)
「がんばろ、皆で」(香澄)

信じるんだ。 跡部さんを。
今の私には、それしかできない。


「だんだん近づいてきたなァ」(赤也)
「このあたりだよな」(桃)
「誰なんだろ・・・」(香澄)
「森の中に入ってみるか」(桃)

桃を先頭に、香澄達は森の奥の方へ歩いた。
木が生い茂り、昼なのにほとんど光が差していない。
足下を見ながら慎重に歩いていると、急に桃が立ち止まった。

「どうしたの? 桃」(香澄)
「え、越前・・・?」(桃)
「リョーマ?」(香澄)

桃の足下を見ると、リョーマが蹲った状態で倒れていた。
背中には大きな傷がある。

「越前ッ!!!」(桃)
「リョーマッ」(香澄)

桃と香澄の声を聞き、海堂もリョーマのもとへ来た。
香澄は、まだ息のあるリョーマを抱きかかえる。


「・・・幸村・・・部長?」(赤也)


赤也は一点を見つめ、名前を呟いた。
香澄もその名に驚き、赤也が見ている方を見る。



地獄だ。
本当の幕開けはここからなんだ、と教えられた気がした。