二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 書き溜めしてる量残りわずかでヤバイ ( No.14 )
- 日時: 2009/12/24 22:06
- 名前: 雪子 ◆4kt9c3whh. (ID: Gb5QJ608)
十一
しばらくしてそっと彼女を離れて、隣のブランコに座り、少しこぐ。
前を見ると、月があった。多少欠けているが満月に近い。
「月はこんなにも綺麗だったか?」
特に口に出す必要はなかったが、沈黙を破りたく思いそうつぶやいてみた。
「知らなかったの?」
笑う。近くなので、その妙に可愛らしい笑顔が見て取れた。
「知らなかった」
第一、こう見ることもあまりなかったのだ。
そういう感性が無いのだろうか。
意識しだしたのは作詞し始めてからなのだ。
「変なの」
そう言って笑った彼女の姿は、闇さえ消し飛ばしてしまいそうな錯覚がした。
「帰ろうか」
随分公園でまた、やはり無駄話をしていて切り出したのは彼女の方だった。
いい加減ネタも切れて、沈黙がつづいていたのだ。反対はしない。
「だな」
同意。もっと適切な言葉があるのだろうけれど、それは言った後にしか思いつかないものだ。
彼女は手を差し伸べてくる。それ手に自分の手をのせる。
それを握り、彼女はアピールするかのように見せつける。
どちらかと言えば、その彼女の笑顔の方に見とれてしまうのだが。
自分も笑い返し、そのまま背を向けて歩きだす。
帰る道はある程度思い出せていた。
帰り道、いつもの癖で周りを見渡しながら歩いていた。
彼女はただ、前を向いて歩いている。
夜道を歩くのもまた、いいかもしれない。
ビルの光が少し光って見える。星も数少なく。
儚く、いまにも消えそうな光が、この夜に広がっていた。
美しい、と感じた。専門的な美しさは分からないが、ただ美しいと。
隣を見れば、彼女があいる当たり前だ。
その星と彼女とは、どちらが美しいのだろうか?
そんな事を考える。星は星の美しさがあり、彼女は彼女の美しさがある。そんな結論にすぐたどり着く。
そして、そんな美しい彼女とこう一緒にいる自分が誇らしくも思えた。
こんな自分と一緒にいてくれる、そんな事が。
「ありがとう」先程も言ったけれど。
自分は、尽くしてやろう。
人生のすべてであれ。
それが自分のできる事だろう? 誰に言うでも無く言う。
「何か言った?」
「いや、なんでもない」
大人になれる日を祈りながら。
子供の自分がいずれ、大人になり少しでも彼女の事を幸せにできるストーリーを語れる事を願いながら。
星輝く空の下、二人はただ永遠に続きそうな道を歩いていた。