二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: その歌の意味を ( No.2 )
日時: 2009/12/18 20:27
名前: 雪子 (ID: Gb5QJ608)



楽器を買い換えた事は一度も無い。それだけ丁寧に扱っているつもりもあるし、なによりそんな金はどこにも無い。
会場に向かう。その途中にメンバーに会うことも無く周りを見渡しながら歩く。
 空は青く、鳥は稀に視界を横切る。下を見れば、整備されたアスファルトと横に雑草が見えた。その逆から車のエンジンが鳴る。親子が居た。カップルが居た。子供たちが居た。世の中には色々な組み合わせの人間がいる。 下をもう一度見る。自分の足は、ボロボロの運動靴だ。横をみれば、雑草の中少し花が見えた。美しい。
 歌詞を書き始めてから、すべてが美しく見える様になった。
空も、花も、無機物も、人間すらも。
なにより一番は彼女だ。
「いってらっしゃい、頑張って」と肩を叩いて微笑んだ彼女を思い出す。
彼女の微笑みより美しい笑顔を自分は知らない。
細かな仕草も、丁寧さを備えた可憐さがあり、見ているこちらが心地よい。
…そんな彼女の賛美をしていると、いつの間にか会場が目の前にあった。
そこのオーナーは良く貸してくれる良い人だ─良い人というのは失礼だろうか?─。愛想もいい。
「お、やあ」
声の方向に目を向けると女が居た。ボーカルの女だ。
自分はその歌唱力と声にひかれ、ずっと一緒に活動していく自信があった。
ちなみに客には可愛いと言う評判もあるらしい。
「やあ」
と、適当に返事をする。
「今日も頑張ろうね」
「そうだな」
いつも通りに会話をし、会場に入っていく。
長く、綺麗な黒髪が風になびいた。