二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: BLEACH 零を背負う者 ( No.26 )
日時: 2009/12/26 18:17
名前: 湯山 アヤカ (ID: VTrHJ6VV)

26 輝く紅き月
  舞奈 視点

 「内から弾けよ 紅月」
 
 藤原が静かに解号を唱える。
 すると、斬魄刀から紅い光が弾けるように、眩しく輝いた。光がなくなると、藤原の手には、鉄扇が握られていた。

 「燃え盛れ 炎帝」

 あたしは、解号を兄様に聞かれないように、小さい声で言った。
 斬魄刀の名は教えたが、始解した所は兄様に見せた事はなかったはず……
 藤原は扇子を口元に当て、あたしの方をじっと見ている。そっちから攻撃して来ないのなら、こっちから行かせてもらうわ。
 炎帝を振り上げ、藤原を斬ろうとしたが、軽く受け流されてしまった。何度やっても、刀身が藤原に触れる事はなかった。
 息が上がってくる。ハァハァ言いながら藤原を睨んでいると、藤原はあたしを見て、おもしろそうに笑った。

 「弱いね、珠君。これが、護廷隊最強と言われている、零番隊の隊長の実力なのかしら?」

 言い返したかったが、頭がうまく働かなくて、言葉が出て来なかった。兄様に斬られた肩の出血がまだ止まっていなく、意識が朦朧としてきたのだ。

 「なんで…なんでこんな事をするの?」

 思わず、聞いてしまった。ずっと、思っていた事だ。

 「なんで、あたしを苦しめるの?」

 すると、藤原は顔を悲しそうに歪めた。勝ち誇った笑顔以外の表情を浮かべる藤原を、あたしは初めて見た。

 「……私は、おたくがうらやましかった。いつも幸せそうに笑っているおたくが、ねたましかった。私だって、私だって…普通に生きていたかったのよ…!」

 その言葉を聞いた瞬間、あたしの頭の中に何かが流れてきた。

 『舞奈ちゃんは将来、何がしたいの?』
 
 『あたしは死神になって、それで、今まで通りにみんなや兄様と一緒にいれたら、いいのかな?』

 これ…夢に見たのと同じだ……

 『るかちゃんは?』

 夢の中では、聞こえなかった相手の名前を、今度ははっきり聞き取る事が出来た。
 るか?藤原 るかの事?……そうか!るかちゃんか!!空白の一日…全部思い出した。

 『私は…いつか藤原家を出て、普通に暮らしたいの。茶州専属の死神になるための、ものすごく難しくて、厳しい教育も、はっきり言っていや。舞奈ちゃんや他の死神みたいに、普通の勉強をして、護廷隊に入りたいの』

 昔のるかちゃんはこう言っていた。そして、あの後、るかちゃんはあたしに、自分の家が何をしようとしているのか、教えてくれた。

 『でも、私は瀞霊廷を潰したくない…だから、お願い舞奈ちゃん…!私をここから、連れ出して!!』

 その時、後ろから二人の死神が現れた。一人はるかちゃんを押さえ、もう一人があたしに近付いてきた。

 『今日聞いた事は、次にお前が目覚める前に全て忘れるだろう』

 その死神はそう言うと、あたしに霊圧を当て、気を失わさせたんだ……
 これが空白の一日の真実……
 あたしは藤原を…るかちゃんを静かにみつめた。