二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: BLEACH 零を背負う者 ( No.29 )
- 日時: 2009/12/26 18:23
- 名前: 湯山 アヤカ (ID: VTrHJ6VV)
29 落ちなかった落ち葉
楓 視点
俺はあの時、全てをあきらめかけていた。
だが、隊長のあの言葉で、俺も紅葉も救われたんだ。
真っ赤に燃え上がる炎。崩れていく屋敷。そして、夜空にはためく白い、『零』と書かれた羽織。
幼かった俺達には、何が起きたのか、よく分からなかった。でも、一つだけ、理解した事があった。
自分達に帰る家はもうないんだと。
俺は紅葉を見た。紅葉も涙でぬれた顔で俺を見る。
「行こう、紅葉。ここから離れるんだ」
そして、俺は紅葉を連れて山奥へと、身を隠した。
俺はあの時、なぜ隠れようとしたのかは、今でもよく分からない。いわゆる本能ってやつかな?いや…たぶん俺は怖かったんだ。あの白い羽織を着た奴が、また自分達を殺しに来るんじゃないかと……
俺の家、宮輝家は四大貴族には入らないが、それでも、なかなかの権力と財力、そして名誉を誇っていた。
そして、父上はいつも、俺と紅葉に言い聞かせていた事がある。
「私たちは瀞霊廷に、死神に守られているかた、今の私たちがあるんだ。だから、決して瀞霊廷を裏切ってはいけないよ」
俺と紅葉は山の中で、どれ位隠れたのだろう? 夏が終わり、秋がやって来て、山の木々は葉を全て落とした。
俺はその時思った。
俺達はの運命は自分達の名前と同じだ。楓も紅葉も、最初の頃は色んな人に観賞されて、ほめられる。だが、それは一瞬のことで、すぐに地面に落ちて、人々に忘れ去られる。
もうすぐ冬が来て、食べ物の見付からなくなる。その時、俺達はどうすればいいんだ……
「楓兄ちゃん…山を……降りよ?」
「…そう、だな……」
山を降りて、自分達の家に戻った。焼け跡はそのままだ。
「そこで何してるの?」
後ろかた声がした。振り返ると、黒い袴を着た女の子がいた。俺達よりは年上だが、まだ子供である事に変わりはない。
「ここは俺達の家だ。自分の家にいちゃ悪いのかよ!!」
すると、女の子は少し眉をひそめた。
「もしかして…あなた達、宮輝家の者?」
「なっ、なんで知ってるんだよ!!!」
「そうなんだね。あなた達、うわさで聞いていた宮輝の双子さんね。名前は?」
「俺は楓…」
「…紅葉……」
「そっかぁ! よろしくね、楓、紅葉。あたしは朽木 舞奈だよ」
「く、朽木って、あの四大貴族の?」
と紅葉。
「う〜ん、昔はそうだったけど、今はもう違うかな?」
笑いながら「あっ、でもそんな昔でもないっか」と付け足したその人を見て、俺は気付いた。
こいつも、俺らと同じで帰る家がないんだ。
「じゃ、行こっか!」
そう言いながら、朽木 舞奈は俺達に手を差し出す。
「へっ…? ど、どこに?」
「瀞霊廷だよ」
舞奈はそう言って、俺らの顔を見るって…瀞霊廷ぇーー!!! ななな、なんで?!
「なな、なんでだ?」
「だって、宮輝家は瀞霊廷に忠実で有名でしょう? だから、信用してもいいかなって」
「だから、それだけじゃ全然分かんねぇーよ!!」
「つまり、死神にしてあげるって事。そうしたら、隊舎にも住めるし、食べる物にも困らないでしょう?」
「ね?」と付け足すと、舞奈は先に行ってしまった。
「どうする…? 楓兄ちゃん……」
「ん〜 そうだなぁ…」
確かに、あいつに言うとおりだ。死神になれば、生活には困らない。
「とりあえず、着いていくか!」
その時、俺は気付かなかった。舞奈が小さな声で何かを言った事、そして、こっそりと手の甲で目をこすったのを。
「ゴメンね…楓、紅葉。全部、あたし達のせいなんだ……」