二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

第0話 突然の出来事 ( No.7 )
日時: 2010/01/08 19:44
名前: 日向 (ID: 0wDrexNa)

アルバロの後をついて行くと、湖の周りに広がる森を抜ければ、目の前には湖から見えていた城。
此処に来たばかりのあたしに、アルバロは歩きながら説明してくれた。
ここは、世界の魔法を管理する魔法都市ラティウムの中心にある学校、ミルス・クレア魔法院。
世界中の魔法士を目指す者たちの憧れであり、名門の魔法学校。
あの城はすでに500年も前に建てられており、建築を重ねている為昔の面影もないが、昔の不思議な力が眠って居るらしい。
また、魔法院には世界中から集まった優秀な実力者と個性溢れる生徒も多く、変り種も少なくは無い。その為、彼にとっては神秘の宝庫でもあり、退屈しない刺激的な場所らしい。・・・・・・そんなのはどうでもいいが。
アルバロの説明を聞きながら城壁辺りまで来るとあたしは、珍しい眺めに周りをキョロキョロする。
その時、ボフッと誰かにぶつかった。
「あ、ごめん・・・・・・・・・」
慌てて一歩退いて前を見れば、そこにはふよふよと力無く浮く小さい赤い生物。
それはギロリとあたしを睨んだが、見た目が可愛い所為であまり迫力が無かった。
て言うか、これは一体なんだろう・・・・・・?そう不思議に思っていると、
「・・・・・・なんだよ」
「あ、いや・・・・・・・・」
グウゥゥ〜〜〜・・・
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
赤い生き物の問いかけにあたしは言葉を繋げようとしたが、まるであたしの言葉を遮るように盛大に大きな腹の虫が鳴った。
何事かと思ってアルバロに視線を投げると、彼はニコニコと笑いながら目の前の赤い生き物に指差す。
それに合わせて視線をやると、赤い生き物は段々と高度を下げていく。
「・・・・・・・・・おっと」
地面に付く直前で赤い生き物を抱き上げる、が。
「なっ!?オイ、コラ放せ!!燃やすぞ、てめー!」
「えぇっ!?ちょ、暴れないでよ!!」
せっかく抱き上げてあげたのに、何故か赤い生き物はじたばたと暴れだす。
しかし、タイミングよく腹の虫が鳴った途端、赤い生き物は少しずつ力を失くしていく。
「チクショー・・・、てめえの所為で余計な力使っちまったじゃねーか・・・」
「いや、それは違うでしょ。何勝手に責任転嫁してんの?」
まるであたしの所為だと言いたげな目で睨む赤い生き物の言葉にあたしはツッコミする。
そのまま視線を下に下ろす赤い生き物を見て、あたしは少し考え事をする。
(見た目からして、トカゲはまずあり得ないよね。だとしたら、これは・・・・・・)
そう思って、あたしは前にいるアルバロに声をかける。
「ねぇ、アルバロ。このドラゴンに何か食べさせてあげたいんだけど・・・・・・」
「そう言うと思ってたよ。じゃあ、食堂に案内してあげる。」
最初から分かっていたアルバロはこっちにおいで、と手招きをしながら歩き出す。
あたしは腕の中でドラゴンを落とさないようにしっかり抱きしめてついて行く。
歩き出すと、大人しかった腕の中のドラゴンに視線を投げられる。
不思議に思って、あたしは視線を落とすと、バッチリ目が合う。
「どうしたの?」
「いや・・・。何で、俺がドラゴンだって分かったんだ?初対面のやつらは、俺のこと火トカゲとか言うのによ・・・・・・」
視線を地面に落とすドラゴンに、あたしは笑みを作って頭を撫でる。
「何言ってんのよ。確かに体は小さいけど、どっからどう見ても立派なドラゴンでしょ?間違えたりしないよ。・・・・・・少なくとも、あたしは、ね」
自身を持て!と笑顔を向けると、ドラゴンは赤い体でも分かる程顔を赤くしてそっぽを向く。
(・・・あれ?あたし、何か変な事言ったかな?本当のことしか言ってないけどなぁ・・・・・・)
その様子にあたしは首を傾げながら、そのまま歩き続けた。
前を歩くアルバロが笑いを堪える様に口元を手で覆っていた事を知らないまま。