二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 壬生浪日記帖 ( No.2 )
- 日時: 2009/12/27 14:10
- 名前: コナ (ID: KCnf7FEj)
第一訓「平和って一体なんですか?」
特別武装警察真選組の屯所にある縁側で、茶をすする男二人がいた。
がたい体型の赤いモヒカン頭の男と、華奢な体躯の切り揃えた黒い前髪で同色の切れ長の双眸を隠している男がいた。
モヒカンは、すずめと天人の飛行艇がのんびりと散歩する空を見上げて呟く。
「平和だなぁ」
「……」
切れ長の男は、何も答えずお盆から饅頭を一口食べる。
「これで、事件が起きなきゃいんだけどな」
全くだ。年々増え続ける、幕府派と天皇派の乱闘事件に追われ、こういう時間が少なくなっているのだ。
だがそれが全てではない。
「沖田の馬鹿が、騒ぎ起こさなかったら…尚良し…」
そう、これが答えだ。一番隊隊長沖田総司のいたずらは真選組の名物であり、短気な副長土方歳三は沖田を追いまわす。
非常に騒がしく迷惑な話だ。
「まあな、それと斎藤…総司に聞かれたら殴られるぞ」
モヒカン男原田左之助は、淡々と話す斎藤一に警告する。
沖田の悪口を言った者は必ずと言っていい程、愛用の番傘で殴られる。その被害者は多数
斎藤は饅頭を食べ終わると知らんと言ったような表情で、無言で湯呑に口をつける。
「…」
何も答えなくなった原田は、しばらく饅頭を頬張っていた。
その時。
騒がしい足音が背から聞こえたが、やんだ。
その主は案の定…。
「あ、一とサノトリ。ちょっと助けてっ」
沖田だった。足音がやんだのは、原田達を見かけたかたであろう。
「また何かやらかしたのか」
原田はニヤニヤと笑いながら、肩を切らす沖田を笑う。
斎藤は、前髪の隙間から光る鋭い眼で沖田をただ睨んでいた。
「はは、実はさ…」
「待てゴラァッ総司!!」
向こうから白髪頭の男土方が、怒声を上げ物凄いスピードで追ってきた。
しかし、その怒りに満ちた顔は怖いというよりどこか笑える。
なぜなら、沖田が土方の仮眠中。顔に様々な落書きを施したからだ。
それは、社会の教科書に載っている偉人の写真の落書きレベルだ。
「あ、やべっじゃあね!」
風の如く、沖田はその場を後にする。
原田は一瞬だが、面白く書かれた土方の顔を見て。
吹き出し、お腹を抱えて笑い始めた。
「何笑ってんだ…原田」
土方の癇に障ったのか赤い凛とした目で原田を睨む。
「ちょ、副長ぉこっち見ないでくださ…ぎゃはははははは!!」
斎藤は笑いまいと口を抑え必死に耐え、体を震わせている。
「俺を笑った奴は、切腹だァって事で、お前ら後で覚えとけよ」
「そんなぁ、副長ぉ勘弁してくださいよぉー!」
原田の言葉はむなしく、物騒な捨て台詞を残し沖田の追跡を再開した土方に届かなかった。
「平和ですね、局長」
「ああ、平和だな」
その頃隣の和室で、のんびりと囲碁を打つ局長近藤勇と二番隊隊長永倉新八が騒ぎを聞いて、そう呟いた。
ああ。本日は晴天なり。