二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: Crazy Night  ( No.6 )
日時: 2009/12/28 15:30
名前: NOAH ◆p5CHNX570g (ID: QJ6Z1NnV)

EPISODE V
  『謎のライバル、現れる』

  −零雅目線−

 昼前、院長先生が<集ノ間>に孤児院にいる子供全員を呼び集めた。

 どうしたんだろ?
 急に皆を集めるなんて……。

 先生は大きな深呼吸を2〜3回ほどして言った。

 「皆に今日、新しい仲間が増えましたよ!女の子です。今からここに連れて来ますのでちょっと待っててね。」

 そう言って駆け足で<集ノ間>を出ていった。

 ……皆を集めるときに一緒に連れてこればよかったのに…。

 数分後———

 先生の声が外から聞こえてきた。

 よしっ!そろそろだな。
 新入りはどんな奴なのか気になる!
 先生、のんびりしてないで早くっ!!

 先生と新入りの子が<集ノ間>に入ってきた、………けど、先生の姿はあるけど新入りの姿がない。

 新入りがいない事に少し皆ざわついたが、よ〜く見ると先生の後ろに隠れていた。

 「ほら、恥ずかしがらず挨拶してごらん。」

 すると、先生の一言で後ろから出てきた。

 その姿は綺麗な蒼髪をした、僕より年下の女の子だ。
 だけど所々に怪我の痕がある。
 「この子はこの教会の近くに怪我だらけで倒れてたの。……しかも、意識が戻っても以前の記憶が無かったし、この子の名前も分からないからここで預かる事にしたの。分からない事もあるから仲良くしてあげてね。」

 僕は少し困った。
 仲良くと言われてもここの孤児院は人数が10人少しと少なかった。
 しかもそのうちの大半が男子だから女子が入って来たとしたらちょっと緊張してしまう。

 何を言っていいのかも分かんないし、目が鋭くて声を掛けにくい。

 だけど皆はそれを構わず威勢のいい返事をしていた。

 「じゃぁ、皆で中庭で遊んでおいで!」

 すると、勢いよく皆が新入りを連れて遊びに行ってしまった。

 「……っこんなん付き合ってられないよ。僕は違う所で遊ぶっ!」

 中庭とは反対方向へ行こうとしたら———

 「あら?零雅君…どこへ行くの?」

 しっ……しまったぁぁぁぁぁ!!
 脱出時の最大の敵の存在を忘れてたぁぁ!!

 僕はダッシュで逃げようとしたが流石、ラスボス…。
 僕は見事に捕まってしまった。
 気が付くと秘蛇がこっちを見ていた。
 しかも憐れみの眼をやりながら。

 「僕がラスボスを忘れてたのに気づいてたのかよっ!!」

 「さぁ、零雅君。皆と遊ぼうね。」

 ………先生の鬼…。
 だけど逆らわない方がいいかもしれない。
 先生からドス黒いオーラが溢れ出てた。

 そのまま先生に引きずられながら中庭まで連れて来られた。

 しかたがない。
 先生が見ている限り新入りと遊ばないとある意味で命に関わる。

 遊んでやるか……。

 「……ところで一体何をして遊ぶんだ?何でもいいなら…………かけっこだ!」

 「えぇ〜〜〜!零雅君は足が速いから負けちゃうよぉ…。」
 そして、皆の目線が応えを待つかのように新入りに向けられた。

 新入りは少し戸惑った様子で、
 「わ……私は別に…かけっこでもいいよ…。」

 その新入りの台詞で世界はこの子中心で廻ってるが如く、嫌がっていた子の心がやりたいの方向に傾いた。

 僕は瞬時に悟った。
 女子の力……恐るべし。

 結局はかけっことなった。

 「まぁ、いいや………僕が一位は確実だな!」

 僕は少し、にやけ顔をした。

 すると、秘蛇が僕のところへ来て皆に聞こえない程度の声で言った。

 「……何笑ってるの?………ねぇ、零雅…。あの子多分零雅より足……速いよ。」

 僕は驚いた。

 あの新入りが僕より速い!?
 まさか……。
 僕とは違って女の子だし、しかも年下だよ!?
 そんな訳ないって。

 そんな考えを消す為、思わず首をブンブンと振った。

 だけどやっぱり本当に速いのか気になる……。

 僕は真偽を確かめるべく新入りに言った。

 「おぃ!新入り。僕とかっけこ勝負だぁ!!!」

 新入りはいきなり挑戦状をたたき付けられ戸惑っている。

 「私…とですか…?」

 「そうだっ!新入りはお前しかいないだろ!ルールは僕たちがいる場所からこの敷地内で一番大きな木の下で待っている先生のところまで!」

 そして深呼吸をして、

 「行くぞ!よ〜〜い……ドン!!!」

 同時に勢いよく僕はスタートした。
 新入りはというと———

 「どうすれば……。と…とにかく走ればいいのよね?」

 まだ走ってなく、近くにいた千里たちに話しかけてた。

 僕は50Mも離れているスタートしたばかりの新入りを見ながらせせら笑った。

 「この距離で僕に勝てる訳無いだろぉ♪諦めなっ☆」

 その零雅の姿を見た秘蛇は思った。

 [……零雅、似合わない…。]

 [はわぁ!酷ッ!!]

 なんでだろぅ。
 なんか秘蛇が酷い事を言ってるような気がする!?
 ハッ……!
 もしかしてこれが以心伝心!?

 なんてバカな考えをしていたら凄い速さで何かが僕の横を通り過ぎた。

 最初はあの速さ、鷹かと思ったが違った。
 あれは……
 「新入り…!?」

 嘘だろ……!?
 今さっきまで僕のず〜と後ろにいたのに!

 いろいろと自分に疑問をぶつけながらフラフラと走りながらやっとゴールにたどり着いた。

 もちろんの事、新入りは先にゴールを果たし他の子に驚きの歓声と零雅に勝つ事が出来なかった子の喜びが舞った。

 「……ほらぁ、言った通りだったよ?」

 秘蛇が残念そうに言った。

 僕はこの勝負を……結果を認めたくなかった。
 ヤバイッ……、泣きそう……。

 新入りの所へ行って今にも泣きそうな目を顔で擦りながら言った。

 「こ……今度、勝負するときは……僕が絶対に勝ってやるっ!!!覚えてろぉ!(泣 」

 僕は人前で泣くのが恥ずかしくて急いで部屋に戻った。

 そのやり取りの姿を影からこっそり見ていた先生は苦笑して言った。

 「零雅君もまだまだね…。それよりあの新しい子の名前が決まってなかったよね?……何にしたらいいのか…。あの子に相応しい名前が……。」

 院長先生は新入りに相応しい名前を考えるのに悩んでそして————

 「うんっ!この名前がいいよね!」

 そして先生はあの子を呼んだ。

 「……何ですか…?先生……」

 「あなたは名前がないでしょ?だから私が考えてみたの。名前は疾風!空を斬るが如く風のように速いあなたをイメージしたのよ。……じゃぁ、改めて、ようこそ!ブライトネス孤児院こと、ライズァ教会へ。あなたは今日から私たちの家族よ!疾風。」

 僕はその光景を部屋からボ〜ッとしながら見ていた。