二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: Rozen Maiden Labyrinth—幻想世界— ( No.4 )
- 日時: 2009/12/30 19:04
- 名前: 更紗@某さん ◆QKsMVMnlNQ (ID: YpJH/4Jm)
PuzzleⅠ
桜田家のリビング。真紅、翠星石、雛苺の他に蒼星石、金糸雀も来て賑やかさはいつもより数倍増している。そのあまりにもの五月蝿さに真紅の契約者、桜田ジュンは二階でパソコンをしている状態にある。
テレビには真紅、雛苺の大好きな人形劇『くんくん探偵』が映っていた。単なる人形劇なのに、妙にリアルなのがこの番組の特徴だ。
ローゼンメイデン第五ドール真紅は、この人形劇が好きというよりは主人公の探偵くんくんが好きだった。なんともうっとりとした表情で、くんくんの名推理を眺めている。
「ほーんと、真紅はくんくんが好きですぅ……」
いつもの凛とした表情からこのうっとりとした感じのギャップが激しくい真紅に対して、同じくくんくん探偵を見ている翠星石が呆れ顔で呟く。それに同調するように蒼星石も苦笑する。
此処に居る姉妹達は皆、この穏やかな日常が好きだった。誰も傷付く事無く、平穏に暮らして行けるこの日常が。
だが少女達はローゼンメイデン、いつかは戦わなければいけない時が来る。
アリスゲームという当然の苦しみを、誘うかのように闇色の薔薇はその日常忍び寄っていた——。
***
そこには紫の水晶が重なり合うように生えていた。透き通った水晶はとても美しく、幻想的な雰囲気を醸し出している。
御伽話にでも出てきそうな空間の中、小さな少女は水晶しかないその世界に咲く一輪の薔薇のようだった。闇のように吸い込まれそうな深い紫の瞳に、流れる黒い髪。更に黒いドレスを纏う姿は“漆黒”というイメージそのものを現している様。
「もうすぐ妾の願いが叶う時が来る。妾が、闇雫がアリスへとなれる時が……」
少女——いや、ローゼンメイデン第八ドール闇雫は、妖しく笑って言った。闇雫はちらっと後ろを見て呟くように言う。
「そなたが協力してくれなければ、妾がアリスになることは出来なかったかもしれぬ……礼を言うぞ」
闇雫が話しかけている相手は水晶に隠れていて、その姿ははっきりと分からない。水晶の重なり合う隙間の部分から、薄紫色の少しだけウェーブのかかった髪先が見える。
「お礼を言うのは私……。貴方のおかげで……もう一度……もう一度真紅に逢える……」
淡い声からして、話し相手はどうやら少女のようだ。言葉には感情があまり出ていなかったが、少ししか感情が現れていない言葉からでも、行き場のない少女の喜びが伝わってくる。
闇雫は少女に対して妖しく微笑すると、自分の人工精霊と思わしき紫色の光を連れて、光を反射し合っている水晶の中へと消えていってしまった。
「真……紅……。お父様……待っていて……」
闇雫の居なくなった空間に、少女の呟きだけが聞こえた。