二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 涼宮ハルヒの嫉妬 ( No.2 )
- 日時: 2010/01/06 23:49
- 名前: song (ID: p17IpJNR)
第0話 プロローグ
時々思う。俺はどうして生まれてきたんだろう——と。別に生きる目的が分からなくなったわけじゃない。『本質的』にどうやって生まれたんだろうか。そう本気で考え込むと、パラドックスにでも引っかかるような感覚になる。
考えたって仕様がないことは分かっている。が、それでもやはり気になる。思うところ、俺達普通の人間は目先の生き方にしがみついて、どうして生まれてきたのかを見失うのだ。
「うぃーす! キョン」
登校最中に谷口あり。陽気に俺に挨拶して来た。
「やれやれ……」
俺は思わず溜息と口癖をこぼす。
「あぁ? 人の顔見て溜息するなよ! 気分悪くなるだろ」
ごもっともだ。ここは言い直そう。
「悪かった。お早う、谷口」
「何かわざとらしくやってないか? ソレ」
「んなことねーよ。ほら行くぞ」
俺は谷口を振り切る勢いで学校へ続く長い長い坂道を登って行った。
「お、おい! 待てよキョン! 」
すると——
「……」
俺は目に映った光景に一度足を止めた。
「んあ? どうしたキョン」
俺の行動に谷口も足を止める。そこにあったのは登校時間だと言うのに、落ち着いて木のベンチに座り佇む北校の女子生徒の姿。渇いた空を見上げてはうつむきを繰り返す彼女に俺は何かを感じた。
「おぉ! 見知らぬ美少女発見! 転校生か?」
谷口は早速食いつく。
「……俺が知ってるわけないだろ」
「なっ、声かけてみようぜ! 」
谷口から何ともマヌケな返事が返ってきた。
「一人でやれ、アホがうつる」
当然俺は断った。
「ア、アホって何だよッ! おいコラキョン! 」
「行くぞー、もう予鈴は鳴ってる」
俺はそう言って、また歩きだした。その道中に彼女はまだ佇んでいるかと思えば、立ち上がり、坂の上から覗く街を仰いでいる。俺はその様子をジッと観ていた。
「何だよ、お前だって気になってるんじゃないのか? 」
「……お前と一緒にするな」
谷口の言葉から、俺は自然と彼女から目を離した。目の端で観た彼女は、小柄な容姿を制服とその上から紺色のセーターで包まれ、長い黒髪を一つにまとめていた。
この一時。その見知らぬ女子生徒と俺がいた空間が『嫉妬』の始まりだ——