二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 涼宮ハルヒの嫉妬 ( No.23 )
日時: 2010/01/07 01:04
名前: song (ID: p17IpJNR)

 こうして、俺はレジでの会計を済ませ、しばらく暖かかった俺の懐(ふところ)は南極への引越しをめでたく決定した。

「何で人に金払わせる時は容赦なく高い物を選ぶんだ……」
 悲しくて涙が出そうな俺に対し、ハルヒは満面の笑みで袋包みを大切そうに抱えている。
「男が身銭のことでグチこぼすと、情けなく見えるわよ? もっと大らかになれないの? 」
「そーゆーことじゃねーよ。お前が選んだ物に対して言ってるんだろうが」
「ん? コレ? 」
 ハルヒはそう言うと、袋の中を開け、これ見よがしに俺の目の前に出した。
「呉服店なんかに行くから、てっきり服を買うのかと思ったら……」
「いいじゃない! って言うか、いい加減その女々しい態度止めなさい! 」
 そして、なぜか俺はハルヒに怒られる。今、ハルヒが手に持っている物、それは『レランパーゴ』と言う漆黒の宝石の入った小振りのネックレスだった。後で気付いたことだが、見る角度によって、金色のすだれが幾つも垣間見える。
「ところで、『レランパーゴ』って? 」
 無知の俺は一応、その宝石について聞いてみる。
「『レランパーゴ』はスペイン語で『雷(いかずち)』って意味。不思議な力があるって聞いているわ」
 始まった……言うまでもないが、ハルヒはこういう類が大好きだ。
「不思議な力って? 」
「うん。持ち主が想う願いなら何でも叶えてくれるって言われてるそうよ。まぁさすがにそれは過大評価よねえ……」
 妙なところで現実的なやつだ。いや待てよ? ハルヒは世界を自由に変える能力を持ってる。あながちハルヒと不釣合いな宝石ではないのかもしれない。
「有り金全部はたいたんだ。大事にしろよ……? 」
「分かってるわよ。っていうか、本当に財布の中スッカラカンなの? 」
「あぁ、狙ったように南極へお引越しなされた……」
 そう。これで、正月までは無一文だ。
「それって、もしかしてこの宝石の力じゃない? 」
「は? 」
「だって、キョンがたまたま持ち合わせてた財布の中身が、私のずっと欲しかったネックレスとピタリ! 」
 なるほど……確かにそうかもしれないと、珍しくオカルトに関心する俺だが、仮に冗談だとしても今の俺には全く笑えるものではなかった。

「……せっかくだから付けてみろよ。より効果が上がるかもしれんぞ? 」
「それもそうね! 」
 そうして、ハルヒは普段しないネックレスに数分格闘しながらなんとか付け終える。そして……——
「どう……? 」
 恐ろしいほどハルヒの雰囲気と『レランパーゴ』の漆黒は似合っていた。
「あぁ、よく似合ってる」
 俺がそう言うと、ハルヒは「よしっ」と意気込んで、今度はハルヒが俺の手を引く。二人でゆく聖夜の空にサンタは今日一日だけ仕事をするのだろう。
 そして、俺へのプレゼントはハルヒと過ごすこの時間だったのかもしれない。
 本当かどうかは誰もわからないが……