二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 涼宮ハルヒの嫉妬 ( No.42 )
- 日時: 2010/03/12 23:23
- 名前: song (ID: p17IpJNR)
第7話 涼宮ハルヒの嫉妬
文学部の標識の上から『SOS団』なる文字がかかげられたその部屋に、ハルヒはただ、いつもと変わらぬ様子で団長の座席にあぐらをかいで座っていた。
「みくるちゃん遅いわねーどこで油売ってるのかしら」
殺風景な窓の外を背景に部屋の中のハルヒは機嫌をじゃっかん損ねているよう。
「ちょっと見てきましょうか?」
すると、古泉が席を立ち、机に手をかける。
「ううん。いいわ。すぐに来るでしょ」
しびれを切らせている割には、ハルヒの対応は穏やかだ。
「そうですか。ところで、彼の方はどうしたんですか?」
古泉はキョンの影が見当たらず、かつハルヒが何も言わないことについて、質問した。
「あぁ、キョンは今新しくSOS団に入る転校生の勧誘を任せてるの!」
ハルヒの言葉にそっと、古泉と長門は一瞬目を合わせる。
「キョンのことだから、今日ここに顔を見せるのは難しいかもしれないけど、近々必ずSOS団の部員として挨拶させるから楽しみにしててね!」
ふてくされていた30秒前とはうってかわって、ハルヒの表情は非常に晴れやかなものとなった。
「……そうですか、それは楽しみですね。どんな方なんですか?」
古泉は立ちあがったまま、ポットの前に歩いてお茶を淹れる。
「それは見てのお楽しみってことで」
ハルヒは古泉に差し出されたお茶を受け取り、一口すする。
「……そう、ですか」
元いた場所に古泉は座り、長門にもお茶を差し出す。その風景はどこか虚ろ気だ。
「どうかしたの?」
古泉の様子に違和感を感じたのか、ハルヒは古泉に質問を投げかけた。
「いえ、明日から冬休みだと言うのに随分急な転校だと思いまして……」
ハルヒの言葉に古泉は我に返り、機転を利かせ答える。というのも、ハルヒに関しての能力は言わずもがな、その超常的の威力を古泉や長門は知っているからだ。ここにおいて、転校生の出現は彼にとって(機関にとって)予測の範囲外であることに他ならない。
「でしょ! こんな時期に転校してくるなんて、きっと何か裏があるに違いないわ!」
古泉や長門の心配をよそに、団長の机に立って雄たけぶハルヒ。
ガチャ……
ドアが開く音がした。
「ごめんなさい。すっかり遅くなっちゃいました」
静かに閉まるドアとともに現れたのはみくるだった。
「やっと来た! 遅いわよみくるちゃん! どこで道草してたの?!」
ハルヒはそう言いつつ、左手にメイド服を持ってみくるに詰め寄る。
「え、えっと、自販機の前でキョン君とひよりちゃんに会いまして……」
ハルヒのものすごい形相にびくつきながら、みくるは言う。
「え……ひよりちゃんに会ったの?!」
予想外の展開に思わずハルヒはメイド服を古泉の向う机の横に置いた。
「はい。キョン君は勧誘の話をされてたようですけど……」
みくるは思いっきり首を突っ込んだことを省いた。何せひよりに対してハルヒに対する『注意』まで促していたのだから、とても本人には言えない。
「ふーん。結構、マジメなトコあるじゃない。で、どうだった? ひよりちゃん入ってくれそう?」
「どうでしょう……何かまだ引っかかりがある印象があったので」
みくるはひよりの印象そのままを言う。
「そう。まぁ今回はキョンに任せましょう。時間は(冬休み中)たっぷりあるわけだし」
ハルヒはニヤリとほくそ笑むと、団長の席へと戻った。
「……気のせいかもしれませんけど、涼宮さん、ひよりちゃんの入部にあんまり積極的ではないですよね? 私たちの時はいつも自分で行動していましたし……」
みくるはハルヒの心境の変化をどこか感じ取ってしたのだろう。古泉とは反対側の席に座ると、疑問を打ち明ける。
「そんなことないわよ。ただ、たまにはキョンに一仕事達成してもらいたいのと……キョンなら今回成功する予感がするの」
再び、ハルヒは椅子の上であぐらを組む。
「……そんですか」
口には出さないが、ハルヒがキョンを信頼し始めたことをみくるは感じた。今までではまずありえなかったことだ。
「にしても……ちょっとヤな感覚もあるのよね〜」
すると、ハルヒは突然疑念を言葉にする。
「……どういうことですか?」
古泉はハルヒの意味深な言葉に座りぼうけで反応した。
「……ううん。これは私の個人的なオンナの勘ってやつかな。団にはあんまり関係ないかな」
そう言って、ハルヒは椅子を回転させ自身を窓に向けて風景を見下ろした。