二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 涼宮ハルヒの嫉妬 ( No.58 )
日時: 2010/05/19 21:27
名前: song (ID: vQ7cfuks)

「俺が聞いたのはこれで全部だ」
 俺は自分で自分の気持ちが理解できなくなった。本当はこんな話をしている時間などないのに、話さなければいけない焦燥感があった。
「……彼女の話していることは筋は通っています。それは本当の話なんでしょう。しかし、家族の惨殺ですか……」
 古泉の言葉に俺は一瞬拳を強く握りしめた。

「……なぁ、古泉、長門、朝比奈さん」

 俺は話が始まってずっと堪えていたことを言うことにした。
「何です?」
 心配そうに俺を見つめる朝比奈さんが、今に限っては色あせて見える。
「今回のこと……ひよりのことは、機関とか組織とか、そういうのナシにしないか? ひよりは俺の家族みたいなもんだ。これ以上非常識の世界に巻き込ませたくない」
 胸に秘めていたことを俺は解放した。
「……それがどういうことか、あなたはご存じのはずです。神人や閉鎖空間、はたまた宇宙人の影響を涼宮さんから我々は受けざるを得なくなる」
 古泉は少し声を太く響かせる。
「私も、キョン君の意見には賛成できません。世界を終わらせない為に私たちは——」
 朝比奈さんの言葉が終るか否かのその時、

「うるせぇッ!!!」

 俺は机を思いっきり殴り、叫んだ。
「ふひゃっ!?」
 突然のことで朝比奈さんは床に尻もちをつく。
「うるさいッ! もううんざりなんだよ!今お前たちが巻き込もうとしてるのは普通の女の子なんだよ!
 宇宙人だろうが超能力者だろうが未来人だろうが、彼女の人生を無茶苦茶にる権利がどこにあるッ!!!」
 俺の中で憤怒が盛り上がった。普段出るはずない荒息がこの時ばかりは重く、重く空気をよどませた。しかし、古泉は……
「では聞きますが、今あなたが涼宮さんに絶頂域の怒りを迎えさせて、全人類を無に帰す……その権利があなたにはあると言うんですか?」
 さらに重い言葉が返ってきた。
「それは……」
 俺は言葉を濁す。
「一人の人間の希薄な幸より、多くの人間の命を救うほうが僕は大事なんです。あなたには悪いですが、いずれ然るべき処置を取らせていただきます。今、島尾さんの存在は極めて危険です」
 そう言って、古泉は部室を出て行ってしまった。次いで、朝比奈さんも何も言わずにカバンを手にとって出ていく。
 俺は、古泉の冷酷な判断をどうしても否定できず、自分がどうしようもなく惨めに見えた。
「…………」
 言葉ひとつ出ずに、俺は床にひざをついて涙を流す。

 静かに、静かに、古泉達の足音が消えてゆく。外の雪が無情に俺から耳を麻痺させていったんだ。