二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 夢の中の俺はモンスターハンター 14話更新 ( No.20 )
- 日時: 2010/05/12 21:37
- 名前: アビス (ID: 3CAtWHbZ)
15話
言ったことをきちんとやり通すには勇気、度胸、そして想い
「はぁ!」
—ギャワアアアァァ!—
戦い始めてからもう1時間は経っていた。
武器を失った竜人だったが、見事なナイフ捌きで暮羽を援護している。
—ズドン!!—
これで何回目かの転倒。すかさず暮羽が攻撃をいれる。
竜人もその間に刺さっているナイフを引き抜く。そのナイフは既に血が染み込んで変色している。
—ギャオオオオウウウ!!!—
ティガは必死の形相で立ち上がるとフラフラになりながらも空へと逃げて行った。
向かった先はおそらくねぐら。それを見送った後
「はぁ、はぁ」
暮羽が膝をつく。竜人はすぐに駆け寄り。
「おい、大丈夫か・・って聞かなくても分かるか。途中から妙な感じはしたんだがな・・・」
元々、ティガと戦う前から猛吹雪でへばっていた暮羽がモンスターと戦うのに
残されていた体力なんてたかが知れていた。これでも頑張ったほうだ。
しかし、もう限界は超えていた。
「片手剣・・俺に渡してくれ。俺が止めを刺してくる」
そう言って右手を差し出す。だが、暮羽は首を横に振った。
「大丈夫。まだやれる」
「どこかだよ!!お前もう、剣をまともに握る力も残ってないだろう!?」
「わかんない。手の感覚が全くないから」
「・・・・・」
凍傷で手の感覚を失ったんだろう。竜人は言葉が出なかった。
おそらく暮羽の状態は自分が思っているよりも酷い。これ以上やれば、確実に死ぬ。
「もし・・・」
「・・・?」
竜人が言葉を切ったことに不思議に思い、顔を向ける。
「もし逆の立場だったら、お前はどうしてる?」
「・・・・・」
暮羽は答えなかった。そんなの竜人と同じことを言っていたと確信しているからだ。
「絶対に俺をこれ以上戦わせようとはしないよな?」
「竜人も私を一人で戦わせようとなんてしないよね?」
暮羽が静かに言い放つ。お互いがお互いの事を本当に想っているからこそ譲れない。
竜人は困ったように頭を掻く。しばらく考えた後
「まいったなぁ。ちんたらしてたらティガの奴、寝て体力を回復させられちまうな。
・・・分かった。戦うなとはもう言わない。
今度はお前が俺を援護しろ。こいつでな」
そう言って、ナイフを暮羽の掌に乗せる。そして暮羽の手から片手剣をつかむ。
「いくぞ」
竜人が静かに、優しく言う。
「・・・うん」
暮羽も静かに、そしてソニックの想いを噛みしめながら言った。
二人が向かうとティガはすでに熟睡していた。言い争っていたぶん時間をロスした。
竜人はすぐにティガのところに向かうと一撃を決める。
その一撃でティガが目を開け起き上がると、吠えた。
盾を構えて、なんとか直撃を交わすがそこで緊急事態に陥った。
ホットドリンクの効果が切れたのだ。残りはすでに0。
先ほど暮羽に飲ませたのが最後だったのだ。
竜人も自分の体がどんどん冷えていくのを感じた。少しずつ体が動かしにくくなっていく。
「っち!」
体が動かしくなった分、反応が遅れる。ティガの突進を何とか防ぐが冷えた腕に響いてくる。
「はぁ、はぁ」
体力もどんどん落ちていく。息が荒れる。またティガが突進してくるが、今度は盾で防ぐこともできない。
「竜人!!」
暮羽がぎりぎりのタイミングで閃光玉を投げる。そして、その後竜人にビンを投げつける。
中には半分ほどだがホットドリンクが入っていた。
「おま・・飲んでなかったのか!?」
驚きの表情をみせる竜人に、暮羽は笑顔で
「最後一個なんだから大事に使わないといけないでしょ。
ほら、早く飲んで!時間ないよ」
竜人は微笑すると、残りのホットドリンクを飲み干すと、一気にティガに攻めていく。
すでにティガは目まいから覚めていたが、そんなのお構いなしに突っ込む。
ティガの僅かな隙を突いてどんどん攻撃を重ねていく。初めて片手剣を使ったが、完全に使いこなしている。
暮羽の援護はなくなっても、竜人は止まらない。
「うおおおおお!!!」
—ギャアオオオウウウゥ!!—
二つの生物が互いに叫び合う。そこにはすでに人間とか、モンスターとかの境界はなかった。
命の限り力を振い、生き抜くためにもがく、二つの命のぶつかりあい。
その時、竜人がティガの右手を断ち切る。暮羽が歓喜を上げる。だが、まだティガ諦めていない。
ティガは右手を犠牲にしてでも攻勢に転じた。
残った左手で竜人を止めを刺すために振り下ろす。
「竜人!!!」
暮羽は叫んだが、竜人は真っ直ぐと獲物だけを見ている。そして竜人も同じだった。
ティガの攻撃に退くどころか逆に突っ込む。ティガの爪の一本が竜人の顔にめり込む。
それでも竜人は引かない。
「はああぁ!」
—ズパァ!—
「・・・・」
竜人は立ち尽くしていて、ティガは倒れこんで動かない。竜人の右目は最後に食らった
ティガの渾身の一撃によってひどく血が出ている。
それでも竜人は勝った。終りを告げた、最高のハンティング。
竜人の元に暮羽がゆっくりと歩いてくる。
「やったぜ、暮羽」
暮羽は目に涙を溜めていた。倒した嬉しさよりも、竜人の傷のせいでだろう。
「おいおい、もうちょっと喜べよ」
暮羽は涙を拭くと僅かに微笑みながら
「馬鹿、竜人がそんなにぼろぼろなのに喜べるはずないでしょ」