二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: バトテニ-無駄な感情- ( No.105 )
日時: 2010/02/16 21:44
名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)


 72 残るモノ




私たちが何をした?
ただひたすら、強さを求めて。
ひたすら、大好きなテニスに打ち込んできた。
それだけじゃない。
一体、何故私たちなんですか?   神様。

私たちが、そんなにキライですか?

もう、何も無いんです。
私たちに残っているモノなんて、何もない。
心も、自由も、仲間も、親でさえも、奪われた。
お願いだから、もう何も取らないで。


「桃・・・ 下がって、私が行くから」(香澄)

香澄の瞳に、あの決意に満ちた光が戻る。

“信じられる仲間のためなら、自分の命を省みない”

そう決意したはずじゃない。
自分が行って、中務と戦おう。
皆を、守りたい。
たとえ、死んでしまっても。 
1度は諦めた、生きること。 だから、怖くない。

「ダメだ。 俺が行く」(桃)

香澄を失うことだけは、絶対に嫌だ。

桃と香澄の間で、想いが交錯する。
かみ合わない。 かみ合わせたくない。
かみ合えば、その時点でどちらかが死ぬ。

「桃・・・ッ」(香澄)
「・・・」(桃)

ごめんな、さよならだ。 香澄。
俺たちは、生きるべきではない。

心が、もう無い。

お前には、有るだろ?

「桃城!!」(宍戸)

宍戸が後ろから叫んだ。
香澄と桃が話している間に、中務は移動していたんだ。

香澄の背後に、歩み寄る。

「あ・・・あ・・・」(香澄)
「こっちだ、かす、み・・・!!」(桃)

「残念、ちょっと遅いよ。 2人とも」(中務)

中務は、香澄の首にナイフを突きつける。

「香澄!!」(桃)
「桃・・・」(香澄)

少しでも動けば、喉にナイフが刺さる。
そんなことになれば、命を無い。
皆を、守ることが出来ない。

「や・・・離して・・・ッ」(香澄)
「それは出来ないよ。 女の子に乱暴するのは、不本意だけどね」(中務)
「・・・ッ」(香澄)

油断しすぎた。
もっと早く気がつけば、こんなのコトにはならなかったのに。
桃達は、すっかり中務のマインドコントロールにはまってしまっていた。

「離せよ、香澄を」(桃)

怯んではいけない。
ヤツの思うままだ。
だが、そんな桃の心の内も、とっくに中務は分かっていた。

「“離せ”? 無理だって言ってるでしょ」(中務)
「じゃァ、力づくだ」(跡部)

跡部も横から入ってきた。

「跡部景吾くん。 キミも仲間思いだね」(中務)

跡部は、何も言わない。
今は、香澄を取り戻すだけ。

「でもさ、香澄ちゃんと隣にいる仲間。 どっちが大事?」(中務)

「は・・・?」(跡部)

中務は、また、あの不気味な笑みを浮かべる。

「香澄ちゃんを生き残らせてあげよう。 でもそれには、条件がある」(中務)



その言葉が、俺たちを崩した。




「殺し合え、今すぐに。 全員で」(中務)