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　７４　引きがね




リョーマは、以前葛藤していた。
その様子を見て、桃が大声を出す。

「やめろ！　越前！」（桃）

リョーマはビクッとして手を引っ込めた。
中務は、舌打ちをする。

「桃先輩・・・」（リョーマ）

どうすれば？
どうすればいい？

「桃城くん、邪魔しないでくれるかな？」（中務）
「大事な後輩の、手を汚させるワケにはいかねェな」（桃）

絶対、仲間の手は汚させない。

「あっれー　桃城くん、忘れてない？」（中務）
「？」（桃）

「殺し合わなきゃ、殺しちゃうよ？」（中務）

「・・・ッ」（桃）

皆、困っている。
皆、苦しんでる、悲しんでる、悩んでる。
全部、私のせいだ。
いつでも、いつまでも、皆の足を引っ張るばかり。
今だって、こうして捕まっている。
なのに皆、優しくて。
こんな鈍くさいヤツ、見捨ててくれればいいのに。
見捨てて、皆だけでもこの男を殺せばいいのに。
邪魔なら、私ごと殺してくれればいいのに。

なのに皆、優しいから・・・

「いいよ、皆・・・　いいよ、もう」（香澄）

涙が、止めどなく流れる。
止まらない、止められない。

「皆、私のコトなんか助けないで良いよ」（香澄）

皆なら、きっとこの男くらい倒せるよ。
だから、私なんかほっといてよ。

「香澄・・・」（桃）

もう、優しくなんかしないで。

「・・・んなこと、出来るわけねェよ」（桃）
「そうだね、無理だよね。　俺もはんたァい」（中務）

中務は、決してナイフを持っている手を緩めず、だが言っていることは裏腹で。

「な、なんなんだよ、お前はよ・・」（宍戸）

宍戸は、混乱したように言う。
中務と話していると、こっちまで来るってしまいそうだ。
何が本当の言葉なのか。　言葉の意味が、どういうモノなのか。

「言っていること、ワケ分かんねェよ」（宍戸）

その言葉を待ってました、とでも言うように、中務は笑う。

「分かんない？　俺の仕事はさ、君たちの殺し合いノ手助けだからね」（中務）

“手助け”？


「君たちが殺し合いをするまで、香澄ちゃんに死なれちゃ困るんだよね」（中務）


意味が分からない。


「香澄ちゃんは引き金だから」（中務）


引きがね。
それは、戦う理由。