二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: バトテニ-無駄な感情- ( No.129 )
日時: 2010/02/20 13:48
名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)


 75 マインドゲーム




「お、始めたねェ、皆」(中務)

中務は、まるでおもしろい映画でも見るような目で、桃達の殺し合いを見ていた。

「BRは、こうでなくちゃね」(中務)

香澄は、口を塞がれて何も言えない。
そんな香澄のほうを、中務は見て笑う。
子供の様な、イタズラっぽいカワイイ笑顔で。

「ね、見なよ。 香澄ちゃん。 無様だよね? 皆」(中務)

香澄は、殺し合いの光景を目の前にして、疑問しか浮かんでこない。

どうして?
どうして殺し合うの?
どうして、今更この男の言いなりなんかに?

「殺し合おうぜ、堂々と」

そう言った桃の表情が忘れられない。
それを受け入れた海堂の不適な笑みも忘れられない。
跡部さんも、宍戸さんも、赤也も真田さんも、どうしてですか?

「香澄ちゃん、何か言えば?」(中務)

自分で口を塞いでおいて、中務はそう言った。
皆を、マインドコントロールし、“狂わせた”張本人。
此処まで、必死に戦ってきたのに。
皆、一緒だったのに。

香澄の怒りは頂点に達し、手に噛みついた。

「痛ッ 何すんの、香澄ちゃん」(中務)
「最低だよ、アンタ。 最低だ」(香澄)
「・・・」(中務)

首に構えられたナイフだけは、中務は絶対に緩めない。
香澄は、中務の顔を見上げ、にらみつけた。


「アンタのせいだ。 皆が、狂ってしまったのも、死んでいったのも、全部」(香澄)


これ以上ないってほどの憎しみと、怒りを込めて睨む。
そして、香澄は抵抗した。
首に有る手を払い除けようと、暴れるだす。
中務は若干力を強めた。


分かってないね、香澄ちゃん。
“狂った”? そうじゃないだろ。


「止めるんだから、離してよ!」(香澄)

香澄は抵抗を続ける。
中務はため息をついた。

「アンタのせいで、皆、自分を見失ってるのッ」(香澄)

違うよ、分かんないかな?
皆、見失っているワケじゃないよ。
バカだね。 香澄ちゃん。

「皆が殺し合っても、私を生き残す気なんて無い癖に!」(香澄)

完全に、人を信じる気持ちを忘れた香澄。
昨日の彼女なら、中務のセリフを信じ、皆を信じ、行動できただろうか。

「私が止めるの! 殺し合うなんてどうかしてる!」(香澄)

一体、彼らが何のために戦うことを選んだか。
彼女は考えただろうか。

自分の意志ではなく、中務のマインドコントロールによって戦うことを選んだ。

そうとしか考えられなくなっていた。
だから、簡単に“止める”なんて言えるんだ。

知ってるかい? 自分だけが、正しいんじゃないんだ。
この世界では、殺すことは罪ではない。
彼らのように何かのために殺し合うことだって、時には正しいこともある。

気づいていないようだね。


「マインドコントロールにはまっているのは、キミじゃないか。 香澄ちゃん」(中務)


昔の自分を、思い出すよ。
キミを見ていると。

「え・・・?」(香澄)

自分が正しいと最期まで信じていた、愚かでバカな、あの日の自分を。
思い出すんだ。 あの日の悲劇を。

「香澄ちゃんが気づかないと、彼らも死ねないよ」(中務)
「何のこと?」(香澄)

やっぱり、まだ気がつけないんだね。

香澄は、急に雰囲気の変わった中務を、呆然と見つめる。
この男の言っていることの意味が、ほとんど分からない。
“マインドコントロール”にはまっているのが、私自身?
どいいうこと?




「キミが気づかなきゃ。 彼らの気持ちに」(中務)


俺の仕事は、優勝者を決めること。
キミが気づいて、生きる決意をしなきゃ、いつまでたっても決まらないよ。


ねェ、リサ。
俺は、俺は最期まで、君たちの気持ちに気がつけなかった。
だから、“正気”の君たちを、“狂気”と勘違いした。

本当に狂ってしまっていたのは、自分自身なのに。


ねェ、リサ。 俺はやっと、気がついた。