二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: バトテニ-無駄な感情- ( No.135 )
日時: 2010/02/23 22:27
名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)

 76 全てが終わるボタン




守られている癖に、守っているつもりで居て。
キモチをろくにしらない癖に、知っているつもりで居て。
そのコトに、気がつけない。

私は、なんて愚かな人間だったんだろう。


それまで、香澄達が苦しみ、もがいている姿を見て楽しんでいた中務は、遠い昔を見るような目をした。
寂しそうで、悲しそうで、さっきとはまるで別の人のようだ。

「・・・?」(香澄)

そんな表情を見ると、それまで暴れていた香澄も我に返る。
この男が、憎くて、憎くて、たまらないのに。
何故か、他人とは思えない、そんな気がした。

中務は、互いに傷つけ合う桃達を見る。
そして、俯いた。 香澄のカオが見えない角度に。

まるで、いつかの自分たちを見るようだ。
誰かを助けたくて。
たとえ、助けたところで、そのコの胸に大きなキズを残すことになっても。
もう一度、自分で歩いて欲しくて。

俺の場合は、途中で立場が逆になっちゃったんだけど。

どうしてだろう、同じ立場なら、君たちを応援したいけど。
昔の俺なら、きっと自分のことの様に思えて、精一杯援助しただろうけど。
今の俺は、心を持っていないようだ。
持っているとしたら、荒んだ、死んだ心だ。
だから、応援できない。
むしろ、失敗すればいい、とさえ思う。
君たちなんか、死ねばいい。
俺や、リサと同じ道を。
このゲームに、ハッピーエンドは存在しない。

中務は、顔を上げ、隠し持っていた物を取り出す。
香澄はそれを見た。

「何、それ・・・」(香澄)

聞かなくても、分かる。
ああ、これが、私たちの命だ。

「何を・・・するつもり?」(香澄)

アナタの仕事は、殺し合いをスムーズに進めること。
目の前をよく見て。
あんなに苦しそうに、あんなに血にまみれて、愛しい人達は戦っている。
アナタのせいで。

ねェ、よく見て。

「分かるでしょ。 飽きたの」(中務)
「は・・・?」(香澄)

飽きた?

「聞こえなかった? 飽きたんだ。 この光景を見るのに」(中務)

なかなか、終わらないね。
彼らのつぶし合い。 
自分たちで決着を付けるのは、悲しいよね?
だから、俺が助けてあげる・・・なんて、ただのキレイゴト。


「今、決めた。 今回のBR、優勝者はナシ」(中務)


頭の中で、中務の言葉がリピートされる。
言葉を放った瞬間中務は、それまで香澄を捕まえていた腕の力を抜いた。
香澄は、その場に座り込む。

「え?」(香澄)
「耳悪いなァ、アンタ。 聞こえたやろ?」(中務)

急に、関西弁になる。
誰なの? アナタは、誰なの?

中務は、香澄を蹴り飛ばした。

「・・・ッ」(香澄)

それを見た跡部は、居ても立っても居られず、こちらに駆け寄る。

「跡部、さん」(香澄)

差し伸べられた跡部の手は、血で汚れていた。
宍戸も駆け寄る。
2人とも、血だらけだ。
ケガだって、たくさんしている。
本当に、殺し合っていたんだ。
そう思い知らされた。

「大丈夫か?」(跡部)

なのに、優しくて。
もう、訳が分からない。
色んなところで、色んなコトが矛盾していた。

跡部は、中務を睨んだ。

「テメェ、そのボタンで何する気だよ、あーん?」(跡部)
「大人には、敬語を使う物だよ。 跡部くん」(中務)

「知らない方が良いと思うけどね・・・しょうがないから、教えてあげるよ」(中務)

ねェ、アナタは一体何処にあるの?
ほら、アナタはまた違う人の様に笑う。



「全てが終わるよ、このボタンでね」(中務)