二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: バトテニ-無駄な感情- ( No.149 )
日時: 2010/02/26 17:14
名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)

 77 “死”の音




「全てを終わらせよう」(中務)
「やめろッ!!」(跡部)

跡部は叫んだ。
藁にもすがる想いで。
俺たちは、まだ、やらなければならないことがある。
こんな風に、このゲームが終わってしまっては、死んでも死にきれない。
キミと一緒に、死ぬなんて出来ない。

事態に気がついた桃も、香澄の元へ走る。
その光景が、香澄には信じられなかった。

どうして皆、正気に戻れているのか。
中務のマインドコントロールにはまり、自分を見失って居たんじゃなかったのか。
私を人質に取られ、不安と恐怖で、お互いを傷つけたんじゃなかったの?

「香澄!」(桃)

呆然とする香澄の手を、必死に掴む。
これが最期だ。
温かさに触れるのも、愛しい手を握るのも、こうして抱き寄せるのも。
最期だ。
最期だけは、守らせてくれ。

「サヨナラ」(中務)

中務は、ゆっくりと指をおろす。
宍戸は、中務に殴りかかった。
最期の悪あがき、と言うヤツだ。
いつだったけ、「暴れようぜ」そう言ったからな。

最期まで、後悔のない行き方をしたい。

中務の指が、ボタンに触れる。
と同時に、宍戸が中務の弁慶を蹴った。

「・・・ッ」(宍戸)
「楽しかったよ」(中務)

「ピピピピピッ」静まりかえった島に、響き渡った。
日吉、お前も、こうやって死んだんだな。
全員が、“死”を覚悟した。
疑問を残しながらも、“死”を実感した。

桃は香澄を見る。
想い、伝えそこねたな・・・

「ピ————————————————」

“死”の音が響き渡る。
中務が、2,3歩下がった。
その時だった。
首輪の音と重なるように、窓硝子が割れるような大きな音が響いた。

「・・・なんだよ? こんなに良いところで」(中務)

突然のコトに、驚きを隠せない香澄達。
目前まできた“死”が遠ざかった気がした。
回りを、見渡す。
いつの間にか、首輪の音が消えていた。
爆発もしていない。
そんな中、冷静なのは中務だけだ。

「キミさぁ・・・ 何てコトしてくれんの?」(中務)

香澄達ではない、誰かと話している。


「・・・手塚クン」(中務)


耳を疑った。
その名を聞いて、リョーマの頭にたくさんのコトが浮かんだ。
出会いから、別れまで。 全てのことを一瞬で思い出す。
そう、別れた。
“手塚国光”とは、死別した。

「手塚・・・?」(リョーマ)

思わず、聞き返す。

「手塚、国光って・・・」(リョーマ)

中務は、ほほえむ。

「その塔から、こっちに出てきなよ。 手塚クン」(中務)

中務の呼びかけには、誰も答えない。
それもそのはず。
中務が問いかけているのは、この場にいない人物。
この世にだって、もう、存在しないはずの人。
このゲームの犠牲になった、あの人だ。

香澄は、塔の方を振り返った。

「手塚、部長・・・?」(香澄)

香澄も、誰も答えない問いかけをした。
放送で手塚の名前が呼ばれた。
息絶えたところを、この目で見たわけではない。
リョーマへの伝言を、自分に残して。 
この人ともお別れなんだって、悲しくなって。

でも・・・

どうして?


此処は、分からないことだらけだ。
教えてよ。