二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: バトテニ-At the time of parting- ( No.172 )
日時: 2010/03/05 16:50
名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)

   


         【七章】 -過去の面影を探して-

        
        偽りの笑顔、偽りの言葉、偽りの自分。

        本当の自分は、誰にも見せない。

        本当の自分は、あのとき死んだ。

        自分でも、自分が誰なのか分からない。

        キミは誰? キミは何? キミは何処?

        探してる。

        アナタを、自分を。

        あの日の面影を。

        今でも、ずっと。

        


 80 あれから




『22年前に制定され、10年前からに再び起用されたBR法が、
 本日午後、正式な廃止が決定されました』


アナウンサーが、淡々と話す。
それを聞きながら、小さなソファに腰掛け、マグカップに入った奇妙な色のお茶を啜った。

「“廃止”になりよったんやなァ、BR」
「そやね」

マグカップを持った男が、後ろから話しかける。

「もうすっかり関西弁やな」
「10年も経つんやから、当たり前よ」

男は、隣に座る。
そして優しく笑いかけ、肩を抱いた。

「よォ頑張ったなァ、香澄」
「蔵のおかげや、ありがと」


あれから、10年。
香澄は24歳の夏を、終えようとしていた。

隣で見守って来た白石は、まだ、“本当の彼女”に触れられていない気がした。