二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: バトテニ-At the time of parting- ( No.237 )
- 日時: 2010/03/06 14:58
- 名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)
83 お前の嘘、俺の気持ち
電話を掛ける。 繋がらない。
もう1度、掛ける。 繋がらない。
何度掛けても、もう・・・ ——————この電話番号に、繋がることはないんやな。
「・・・ん・・・なんや、俺・・・?」(謙也)
目が覚めた。
いつの間にか、炎天下の空の下ではなく、何処かの天井の下にいた。
「お、目ェ覚めたか。 謙也」(白石)
「白石・・・」(謙也)
白石はいつもと変わらずほほえんで「大丈夫か?」と
問いかける。
財前もそれまで壁にもたれていたが、こちらにやってきた。
謙也は、ゆっくりと体を起こす。
「なんや・・・迷惑かけてしもたな」(謙也)
謙也は申し訳なさそうに言う。
そんな表情を見たら、問いつめたくても問いつめられない。
「誰も、そんなふうに思てへんわ。ほら、帰んで」(白石)
白石に合わせ、財前も初めて笑いかけて来た。
コイツらに、心配かけたらアカン。
心の奥で、強く思った。
ふと枕元を見ると、傷の付いた携帯がおいてあった。
自分の物だ。
それから聞こえた母の言葉が、聞きたくもないのに頭の中で、勝手にリピートされる。
「侑士くんが・・・」
体に、寒気が走る。
吐き気がするような気がした。
「謙也? どないした?」(白石)
白石に呼ばれ、我に返る。
寒気を取り払うように、自分の携帯を握りしめ、立ち上がった。
「今行く」(謙也)
言えん。 コイツらには、何も言えん。
白石は、度々、謙也の顔色をうかがった。
何があったのか、母と何を話したのか、それは俺たちに言えないことなのか。
聞きたいことが色々有りすぎて、逆に何も言えなかった。
何も知らないから、無神経なことを言ってしまいそうな気がして。
謙也も、何も言わない。
つい、白石に辛いことを言ってしまいそうだったから。
抱えきれないくらいの、悲しみを、ぶつけてしまいそうだから。
そんなふうに、何も話さず歩いていると、謙也の家の前まできた。
「あ、ほな。 またな」(謙也)
謙也は、最後まで偽る。
笑顔を、偽る。
自分を、頼ってくれないのか。
「あ、謙也!」(白石)
「なんや?」(謙也)
どういえばいいのか分からない。
だけど。
「何かあったんなら、言いや?」(白石)
それだけ。
トモダチとして、それだけは言っておこう。
謙也は、あれから初めてホンモノの笑顔を見せたような気がした。
同時に、少しだけの涙を。
「ありがとな」(謙也)
何も知らない俺は、そんな謙也を見て少し安心した。
明日には、元通り、そう思って。
でも違った。
明日には、元通り、ではなく、全く違う、毎日が待っているんだ。
そう、これは終わりではなく始まり。
そんな事実をたくさん知るのは、もう少し先のこと。