二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: バトテニ-At the time of parting- ( No.281 )
- 日時: 2010/03/10 14:21
- 名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)
86 動き出す
動き出す。
知らない間に、俺を取り巻くたくさんのことが。
そして、俺自身の運命が。
“俺も、東京へ行く”
やっぱ、気ぃ使わせてしもたかな。
白石が帰った後、謙也は後悔でいっぱいになっていた。
自分の部屋の壁にもたれかかり、そのまま座り込む。
言えない、迷惑はかけれない。
そう思っていたのに。
自分はさっそく、白石に色々話して、心配させて。
こうなることくらい、なんとなく予想できたのに。
残り少ない夏休みと、引退までの部活を、全部犠牲にして。
俺の支えになろうとしてくれているのが身にしみて分かる。
情けない。
“迷惑は掛けたくない”そんなことを言っておいて、誰かが支えてくれていることが、
こんなにも、嬉しい。
謙也はため息をついた。
そうだ。 どうしようもないほど、誰かにこの苦しみを聞いて欲しかった。
どうしようもないほど、誰かに頼りたかったんだ。
泣かない、そう決めても涙は出てくる。
侑士、侑士。
お前も、そうだったか?
大阪駅に来ていた。
白石は、あれから両親に頼み込み、謙也とともに東京へ行くことを許して貰えた。
ホームに入ると、謙也はもう着いていた。
「謙也」(白石)
「白石」(謙也)
白石が呼びかけると、謙也もこちらを向く。
白石のたくさんの荷物を見ると、やっぱり申し訳ないキモチでいっぱいになってしまう。
「その、お前・・・」(謙也)
何か言わなければ。
出来れば、申し訳ないキモチと感謝の気持ちが伝わる言葉。
そんな都合の良い言葉、有るわけもなく。
あったとしても今の謙也も頭には、浮かばない。
そんな様子を見かねた白石は、ニカッと笑った。
「白石?」(謙也)
「なんも言わんでええ。 つうか、言われても困る」(白石)
何も言わなくていい。 何も心配することはない。
俺が勝手に、お前に着いていきたいと思っただけだから。
「帰れとか言われても、困るしな」(白石)
だから、お前も笑え。
無理にでもいい。
ただ、笑え。
想いが伝わったのか、そうでないのか。
2人の間に、しばしの間笑顔が戻った。