二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: バトテニ-At the time of parting- ( No.308 )
日時: 2010/03/14 16:09
名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)

 88 出会う




「着いたでェ 東京」(白石)
「そやな、タクシー拾うか」(謙也)

謙也と白石は、やっと東京へ到着。
謙也は、白石のおかげか、崩れ落ちそうな感情を抑えることが出来ていた。

タクシーを拾おうと、手を挙げると一台の車が止まった。
白石と一緒に、そのタクシーに乗り込む。

車が進む。 少しずつ、侑士の家に近づくのが肌で実感できた。
窓の外を見る度に、手が小刻みに震えた。
実を言うと、まだ足がすくんでいた。

東京へ来て、侑士の家に行ったってもうヤツはいないんだ。
今、自分の携帯に登録されているヤツの電話番号に書けても、出る人はいないんだ。
そんな事実を受け入れるのは、簡単なことではない。
だから、向き合わなければならないんだ。
ヤツの“死”と、BRと、優勝者と。

それくらい、ちゃんと分かっているから。
だから、進むんだ。


「謙也」(白石)


自分の手を見つめていると、隣から声が聞こえた。
この声に、救われるんだ。 俺は。

「俺がおるから」(白石)

いつでも、苦しいときは俺に頼って。
テニスとは、ワケが違うかもしれない。
テニスで負けたときのキモチの倍以上、苦しいと思う。
だけど、支えてくれる人がいる安心は、テニスで仲間がついていてくれるときの安心と、同じだろ?

白石は、いつものように笑う。
つられて、謙也も笑った。

「・・・心配性やなァ 白石は」(謙也)
「それぐらいやないと、あそこの部長は務まらんわ」(白石)


どれほど進んだだろうか。
疲れもあって、2人はいつの間にか寝てしまっていた。
その間に、タクシーは侑士の家に到着した。
とはいえ、もう、この家に侑士はいないのだが。

「お客さん、着いたよ」
「え・・・」(白石)

白石は、窓の外の表札を見る。
“忍足”、ときざまれていた。

「ホンマや」(白石)

今日は、謙也も白石も、此処に止まる。
昨日の夜に連絡済みだ。
まだ寝ている謙也を、白石は起こす。

「着いたで、謙也」(白石)
「・・・あぁ、そやな」(謙也)

代金を払ったり、荷物を下ろしたりしていると、家の中から女の人が1人。

「あ、おばさん」(謙也)
「いらっしゃい。 謙也くん・・・とあなたは・・・」(?)
「白石です。 すんません、忙しいときに」(白石)
「あなたが、白石くんなのね。 侑士の母です」(侑母)
「初めまして」(白石)


侑士の家に入り、侑士の家族と出会う。
皆、悲しい顔をしていながらも、精一杯笑っていた。

明日、BR参加者の葬儀があって、そこで色々と説明があるそうだ。
「今更、なんの説明があるんだろうね」と、母が言った。


そこでは、優勝者とも会うことになるかもしれない。


謙也は、自分を抑えられる自信がなかった。





近づいていた。
俺と、キミの出会い。

悲しい悲しい目をしたキミとの、最悪で最高の出会いが。
そして、新しい偽りだらけのキミのスタートが。