二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: バトテニ-At the time of parting- ( No.331 )
- 日時: 2010/03/17 18:05
- 名前: 亮 (ID: nWdgpISF)
90 衝突する想い
「一ノ瀬、香澄やろ、お前!」(謙也)
謙也の呼びかけに、静かに振り向く女の子。
謙也も白石も、息を呑んだ。
この子が、優勝者。
香澄は口を開こうとしなかった。
泣くわけでもなく、笑うわけでもなく、謝罪をするわけでもなく。
だた、こちらを見ているだけ。
悲しい悲しい、その目で。
「何か、言ったらどうや」(謙也)
「謙也・・・」(白石)
謙也自身、香澄にどうして欲しいか、なんて分からないて。
香澄も、謙也に何を言えばいいのか、なんて分からない。
だから、黙っている。
それに耐えられなくなったのは、謙也だ。
「どないか、言ったらどうや!! 一ノ瀬香澄!!」(謙也)
大声で怒鳴りつける。
香澄はその声でやっと表情を変えた。
「謙也!」(白石)
白石は、そんな謙也を必死に止める。
こうなることは、だいたい分かっていたんだ。
謙也は、なんとも思っていない、自分は大丈夫、と言っているがそうじゃないことくらい、見れば分かる。
こうなることは、予想していたんだ。
「・・・ッ」(香澄)
言葉を返さなくては。
この人が傷ついているのは、自分のせいではないか。
自分のために、あの人が死んで、この人が傷ついている。
だから、何かを言わなくては。
でも、何を言えばいいのか、言葉が出ない。
この状況に適切な言葉なんて、ない。
謙也が何を求めているかも、分からない。
「お前、お前のせいやぞ! アホ!」(謙也)
謙也は、香澄に罵声を浴びせる。
謙也も、自分で分かっていた。
香澄を責めるなんて、間違っている。
コイツに、罪なんて無い。
顔を見れば、コイツがどんな思い出此処に立っているかくらい、分かる。
だけど、止まらないんだ。
止められないんだ。
謙也は、白石の腕を振り払い、香澄の胸ぐらを掴む。
「謙也!!」(白石)
白石は止めようとおおごえで叫んだ。
でも、止まらない。
「お前のせいで、侑士は死んだんや! 侑士を返せや、侑士は・・・」(謙也)
声が、どんどん小さくなる。
胸ぐらを掴んでいた手は、次第に力が無くなった。
「侑士は・・・」(謙也)
そこまで言って、謙也は泣き崩れた。
白石の前で、初めて取り乱す。
怒って、憎しみを押しつけて、無駄なことだと分かっているのに香澄を責めて。
間違ってるって分かってる。
正しいことが何なのかは、分からないけれど。
これが間違っているのは分かっている。
それでも、抑えられなかった。
泣き崩れる謙也をみて、香澄も腰が抜けたようにその場に座り込む。
そして、自分も涙をながしながら言った。
「・・・ごめんなさい」(香澄)
この言葉が、適切だとは思わないけれど。
「生きて帰って、ごめんなさい」(香澄)
この言葉で、アタなの気が収まるとは思えないし。自分も納得できないけれど。