二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: バトテニ-無駄な感情- ( No.35 )
- 日時: 2010/01/31 12:54
- 名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)
57 不意打ち
「不二先輩ッ!!」(リョーマ)
突然、リョーマが叫び声を上げた。
リョーマの隣に居た不二は、血を流して倒れた。
「な、に・・・?」(香澄)
「不二、先輩ッ」(桃)
香澄と桃は、話をやめて倒れている不二の元へ駆け寄った。
一体、何が起こったのか。
「何があったんだ、越前・・・!」(桃)
「桃先輩ッ 不二先輩が、後ろ、から・・・」(リョーマ)
「後ろ・・・?」(侑士)
不二が座っていた石の後ろには、人が充分隠れられるだけの草が茂っている。
リョーマの言葉を聞いて、桃は草むらへ向かう。
「誰だ! 誰が居るんだ!?」(桃)
「止めろ、桃城! 敵や!」(侑士)
侑士の言葉を聞かず、桃は落ちている木の棒で草をかきわける。
「出てこいよ!」(桃)
「・・・ッチ」
舌打ちをする音が聞こえた。
桃が振り回す棒を華麗に避けて、香澄達の目の前に現れたのは。
「お前・・・」(侑士)
見間違えるはずがない。
その身軽さは、その髪型は。 キミしか居ない。
「やっぱり、お前やったんか」(侑士)
「・・・」
「岳人」(侑士)
眉一つ動かさず、目の前で人を刺した仲間に話しかける侑士。
そのポーカーフェイスの下に、どんな感情が隠されているかなんて、想像できない。
「殺されるのは、ごめんだぜ」(岳人)
冷たい目で、侑士を見つめる岳人。
持っている武器は、短刀か。
「岳人、お前・・・」(侑士)
侑士の言葉を最後まで聞かず、岳人は突っ込んでくる。
「ッチ」(岳人)
ねらいは、俺1人か?
侑士は岳人の攻撃を避ける。
それでも尚、岳人は掛かってきた。
彼を、ここまで狂わせたのは、いったい何なのだろうか。
「やめろッ 岳人!」(宍戸)
「向日さん!」(桃)
2人が割ってはいるが、岳人は眼中に無い。
有るのは、侑士だけだ。
侑士が避け続け、次が5度目の攻撃。
さすがに、この場にいるのは危ない。
スキを見つけて逃げるか、戦うか。
選択肢は2つだろう。
岳人の短刀が、侑士の腕をかする。
これ以上、避け続けるのにはムリが有る。
「逃げろ、お前ら」(侑士)
「はァ?! 出来ねェよ、んなこと! 出来るわけねェだろーが!」(宍戸)
宍戸は、侑士の提案を否定する。
大事な仲間を危ない場所において逃げる、これは、自分たちにとって1番苦しいこと。
そして、苦しい以上に、失ってしまうリスクがある。
「逃げろって、ゆうてるんや。 早うし」(侑士)
宍戸の必死の訴えにも、冷静に対応する。
「ムリだ、忍足! 俺も残る・・・ッ!」(宍戸)
失いたくない。 2人とも。
「逃げろ」(侑士)
ガンとして意見を変えない侑士と、引かない宍戸。
言い合いを続けているウチに、また岳人が攻めてくる。
「岳人ッ! やめろ!」(跡部)
跡部も痺れを切らし、大声を出す。
侑士はその攻撃も避けた。
「逃げてくれや。 お前ら」(侑士)
「・・・忍足ッ」(宍戸)
「俺はな、見とおないねん。 仲間が死ぬとこ」(侑士)
小さな声で、独り言のように呟く。
宍戸には、よく聞こえなかった。
「全然、大人やないで。 俺」(侑士)
ただ、自分が傷つかなくて良い道を選んでいるだけ。
「お前の方が、よっぽど大人や。 行け。 宍戸」(侑士)
苦しみを受け止め、乗り越えたお前達の方が、大人で強いやろ?
「行くぞ、宍戸」(跡部)
「・・・ッチ」(宍戸)
納得は出来ない。
侑士の考えていることなんて、半分も分からない。
だけど。
「忍足さんッ」(香澄)
「お別れや。 香澄ちゃん」(侑士)
香澄だって、侑士を1人になんてしたくない。
だけど。
侑士が、自分たちを“大切な仲間”と思っていてくれるなら。
私たちもその気持ちに答えなくては。
振り向かなかった。
涙も流さなかった。
強くなりたかったから。
あなたの気持ちに答えたいから。
「さ、思う存分戦えるなァ 岳人」(侑士)
「優勝者は、俺だ」(岳人)
会いたくなかった。
こうなることは、目に見えていたから。