二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: バトテニ-At the time of parting- ( No.374 )
- 日時: 2010/03/19 21:59
- 名前: 亮 (ID: nWdgpISF)
93 間違った強さ
強くなるよ。
強くなるから。
弱さなんて、二度と見せない。
香澄は、自分の部屋のベッドに寝ころんだ。
家に帰ってからも、親とは一言も口を聞いていない。
聞きたくない。
帰り道、桃の母親に会ったが、香澄はあいさつもしなかった。
目を合わせることさえも。
桃の母親も、何も言わなかった。
許せなかった。
許してはいけない。
自分たちを売った、大人達を。
ため息をついた。
学校の教師も、トモダチも、自分のほうを見向くもしない。
悪口を言われたり、嫌がらせをされる方が、楽なのかもしれない。
その方が、強がっている必要がなくなるでしょう?
涙が、頬を伝った。
もう、泣かないって何度も誓ったのに。
あの島の中でも、もう泣かないって、笑おうって、誓ったのに。
意志とは反対に、涙がこぼれる。
今日、思い知らされた。
手塚部長のいない、図書室。
不二先輩のいない、写真室。
大石先輩のいない、部室。
英二先輩のいない、体育館。
河村先輩のいない、屋上。
乾先輩のいない、第3資料室。
海堂のいない、トレーニングルーム。
リョーマのいない、校舎裏の巨木の下。
桃のいない、帰り道。
皆のいない、テニスコート。
何処に行っても、蘇る皆との記憶。 1つ1つの言葉。
ああ、あそこでこんなこと、言われたっけ。
ここで、あんなこと、あったけ。
すべてが恋しくて、苦しくて、なつかしくて。
ほんの少し前の話しなのに、もう随分と前のことみたいで。
放課後は、無意識に足がテニスコートへ向かったんだ。
そんな自分が、どうしようもなく情けなくて。
ああ、1人じゃ無理だ。
1人じゃ、なにも出来ないよ。 皆。
寝返りを打つと、枕元においていた携帯が目に入った。
携帯を開き、無意識にアドレス帳を開く。
“白石蔵ノ介”
目に飛び込む、名前。
気がついたら、もう、通話ボタンを押していた。
「どないしたんや? 一ノ瀬さん」(白石)
誰かに、寄りかかりたくて。
こんなのは、自分の勝手な感情だって、充分分かっているけれど。
あの日で、泣くのはやめよう、と決めたけれど。
すこしだけ、かたをかしてください。
もう、いっぽもうごけません。
意志が弱くて、ごめんなさい。
強くなるから。
だから、許して。 皆。