二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: バトテニ-At the time of parting- ( No.405 )
- 日時: 2010/03/21 20:02
- 名前: 亮 (ID: nWdgpISF)
94 新天地
「大阪へ行く?」(母)
何日かぶりに、家族と話す。
もう、決めたんだ。
大阪の、祖母の家に下宿する。
「決めたの」(香澄)
「でも、そんな急に・・・」(父)
父のセリフに、母が頷く。
もう、あなた達と一緒に暮らしていたくない。
「ここじゃ、もう無理」(香澄)
「香澄・・・」(母)
「悪いけど。 もう、荷物もまとめているから」(香澄)
母は、泣いた。
父は、怒った。
それでも、香澄は意見を変えなかった。
「じゃ、明日には、もう出るから」(香澄)
香澄は、冷たく言い放った。
いきなりすぎて、両親は手続きに追われたし、出来れば引き留めたかった。
だけど、自分たちにはもう、香澄をどうすることも出来ない。
香澄に、指図することも、忠告することも、何も出来ない。
あの日、何かを失ったのは、香澄達だけでは無かった。
「香澄・・・ 本当に行ってしまうの?」(母)
「さよなら」(香澄)
もう、顔も見たくない。
香澄は、1度も振り返らなかった。
ココロでは、分かっていた。
母も、父も、誰も、こんなこと望んでは居ないことくらい。
だけど、香澄は許せなかった。
「香澄」
駅へ行く途中、誰かに呼び止められた。
香澄は、振り向く。
出来れば、誰にも会いたくなかったのだが。
「裕太・・・」(香澄)
裕太は、香澄の家に行く途中だったようだ。
走ってきたのだろう。
汗をかいていた。
「何? この前、不二先輩のことは話したよね?」(香澄)
「お前・・・ 何処行くんだよ?!」(裕太)
香澄の荷物を見て、裕太は訊いた。
明らかに、ここから離れようとしているのが分かる。
「・・・大阪」(香澄)
「大阪・・・」(裕太)
「此処じゃ、もう無理だから」(香澄)
「香澄・・・」(裕太)
「ごめんね。 散々迷惑掛けて。 それと、ありがとう」(香澄)
優しさをくれて。
裕太は、唇をかみ締める。
次に会うのは、いつになるだろうか。
分からない。 だから、今言わなくては。
「兄貴は、きっと幸せだったよ!」(裕太)
歩き書けた香澄は、足を止めた。
そして、もう1度裕太のほうを振り向く。
「笑って、仲間に囲まれて死んだんなら、きっと幸せだったよ」(裕太)
そうだよな? 兄貴。
兄貴、楽しかったよな?
「・・・ありがとう」(香澄)
そうだ。 テニス、続けなきゃ。
不二先輩、そう願ってた。
香澄は歩き出した。
また、笑ってテニスを見られますように。
「あ、電話・・・」(香澄)
新幹線の中で、携帯電話が鳴った。
急いで、通話ボタンを押す。
白石からだ。
「白石さん、こんにちは」(香澄)
「自分、大阪来るって、ホンマか?!」(白石)
白石は、慌てて香澄に問う。
香澄は、至って冷静で。
「白石さんが、“気が向いたら来い”って、言ったんじゃないですか」(香澄)
「せやけど、自分、親とか転校の手続きとか・・・」(白石)
「すませました。 もう、新幹線の中です」(香澄)
「早ッ」(白石)
白石が、すばやく突っ込む。
香澄は口を開いた。
「少しでも早く、あそこを離れたかったんです」(香澄)
小さくて、弱々しくて。
それは、今の香澄の本音。
「早よ、此処へ来い。待ってるで」(白石)
それだけ言って、電話を切る。
恥ずかしくて、とてもそのまま会話を続けられなかった。
香澄は、いきなり切れた電話に驚いたが、白石の優しさが嬉しかった。
皆。
皆のぶんまで、前に進むよ。
桃。
桃のこと、いつまでも大好きだよ。
だから、私に力を貸して?
新しい場所で、笑顔を保だけの強さを、私に託して?